債務超過からの転換、仮想通貨で再起を図る
レディースアパレル企業「ANAPホールディングス(アナップ・ホールディングス、証券コード:3189)」は23日、連結子会社である「ANAPライトニングキャピタル」が、前日の22日付で584.9057 BTCを取得したことを明らかにした。
取得金額は約80億円。正確には、6月9日の取締役会で決議された「第三者割当増資」によってANAPホールディングスが取得したビットコインを、グループ内の事業会社へ移管したものだ。これにより、同社のビットコイン総保有量は814.1405 BTC、総投資額は約115億円へと膨れ上がった。
このド派手な「爆買い」は、順風満帆な経営状況から生まれたものではない。むしろ、逆である。時計の針を巻き戻してみれば、同社が置かれていた状況の深刻さが浮かび上がってくる。驚くべきことに、ちょうど2年ほど前の2023年7月、ANAPは1億3,000万円の債務超過に転落し、深刻な経営危機に喘いでいたのだ。
かつてANAPは、若年層の支持を集めたレディースアパレルブランドとして、90年代後半のファッションブームの波に乗って急成長した。多品種小ロット戦略を掲げ、「他人とかぶらない服」を好む消費者心理にフィットした商品展開で人気を博した。しかし、実店舗からEC(電子商取引)へのシフトが進む中で、その特性は商品管理コストの増大という弱点に変わり、業績は長期的に低迷。新型コロナの影響も加わり、経営環境は一段と厳しくなった。
そこからの再起策として打ち出されたのが、アパレル本業とは一線を画す「ビットコイン事業」への本格参入だった。同社は2025年8月期末までに1,000 BTC以上の保有を計画しており、今回の取得もその着実なステップの一つと位置づけられる。
もちろん、これは単なる博打ではない、という見方もできる。同社はビットコインの購入及び管理についての方針を定め、保有する仮想通貨は四半期ごとに時価評価し、評価損益を損益計算書に計上するとしている。単なる投機ではなく、明確な財務戦略の一部として位置づけている点が注目される。
かつて若者の流行を追いかけたアパレル企業が、今度はデジタルのゴールドラッシュに社運を託す。この前代未聞の事業転換が、ANAPを再び栄光の舞台へと導くのか、あるいは底なし沼へと引きずり込むのか。そのドラマの結末を、市場はしずかに見守っている。
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