収益悪化やM&A失敗で継続困難に、上場廃止が追い打ち
BNBチェーンおよびファントム(Fantom)上で運営されてきた著名なレンディングプロトコル「Alpaca Finance(アルパカファイナンス)」は26日、すべてのプロダクトを段階的に終了すると発表した。
アルパカファイナンスは、ユーザーがレバレッジをかけてイールドファーミングに参加できるプラットフォームを提供してきたDeFi(分散型金融)プロトコルである。イールドファーミングとは、保有する暗号資産(仮想通貨)をプロトコルに預けて流動性を提供し、報酬を得る仕組みだ。
アルパカファイナンスは公式ブログの中で、これまでの歩みを振り返り、プロダクト終了に至った背景を詳細に説明している。
2021年初頭のローンチ時、BNBチェーン上でDeFiが隆盛する中、アルパカファイナンスのレバレッジドイールドファーミングは迅速に市場の支持を得て、数ヶ月のうちにBNBチェーンの基盤プロトコルの一つとなった。
しかし、その後登場した「集中流動性AMM(自動マーケットメイカー)」が市場環境を根本的に変えたという。集中流動性AMMとは、流動性を提供する際に、特定の価格範囲に資金を集中させることで資本効率を高める新しいタイプの分散型取引の仕組みである。これらの新しいモデルは、仕組み自体にレバレッジ効果が組み込まれており、従来のイールドファーミングの魅力と収益性を大幅に低下させたと分析している。
その後もアルパカファイナンスは新しいプロダクトを開発し続けたが、市場の低迷、利回りの抑制、DeFiアクティビティの減少により、これらのプロダクトの持続可能性は厳しくなっていったと述べている。
さらに、運営資金がプロトコルの収益に直接連動していたアルパカファイナンスにとって、TVLと利回りの低下に伴う収益減は深刻な問題だったようだ。結果、大幅なチーム規模の縮小後も、2年以上にわたり赤字経営が続いていたという。
2025年初頭には、他の複数のプロジェクトとのM&A(合併・買収)交渉も進めていたが、市場が再び下降局面に入ったことで、これらの交渉も最終的には不調に終わった。決定打の一つとして、2025年5月2日に大手取引所「Binance(バイナンス)」で独自トークンALPACAが上場廃止となったことも、大きな打撃であったと言及している。

ALPACAの時価総額ランキングは、記事執筆時点で891位。2021年の登場直後から価格は大きく下落し、その後も長期にわたり低迷が続いていた。
サービス終了プロセスについて
アルパカファイナンスは、ユーザー資産の安全な払い戻しを最優先事項とし、各プロダクトの具体的な終了手順とスケジュールを以下のように定めている。
- アルパカファイナンス1.0(従来のレバレッジドイールドファーミング):
- 2025年6月の第1週までに、すべてのファームにおける新規ポジションの開設を無効化する。
- ユーザーに対して、できるだけ早くポジションをクローズするよう強く推奨。2025年6月30日時点で残っているアクティブなポジションは自動的にクローズされ、ローンは返済され、残余価値はポジション所有者に返還される。
- 自動化戦略ボールト(AV):
- 全ての戦略を即時停止。ローンは返済され、ボールト内の資産はBNBなどのベーストークンに変換される。
- Alperp(分散型無期限先物取引所):
- 即時、ポジションサイズを縮小することのみが可能な「リデュースオンリーモード」に移行する。
- 2025年6月30日時点で残っているアクティブなポジションは自動的にクローズされる。
- アルパカファイナンス2.0(マネーマーケット):
- 貸付を無効化。ユーザーにはローンの返済とポジションのクローズが推奨される。
- 2025年7月30日時点で残っているアクティブなポジションは自動的にクローズされる。
- アルパカファイナンスフロントエンドへのアクセス:
- ユーザーが便利に資産を引き出せるよう、2025年12月31日までフロントエンドの維持・稼働を約束する。
アルパカファイナンスは、「私たちの仕事がDeFiの進化に小さな足跡を残し、私たちが共有したアイデアや教訓が将来のプロジェクトで生き続けることを願っています」と、その歩みを締めくくっている。一時は主要DeFiプロトコルとして名を馳せたサービスの終了には寂しさもあるが、業界において健全な競争が行われている証左とも言えるだろう。
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