オクラホマ州が挑むインフレ防衛最前線
オクラホマ州議会の下院議員であるコディ・メイナード氏は15日、「州の年金基金」や「州の貯蓄口座」といった公的資金の一部をビットコインに投資する法案を提出した。この法案は、インフレ対策だけでなく、州の財務的自由を促進し、購買力を保護することを目的としている。
法案の中核には、ビットコインの分散型の性質とその有限供給があり、従来の通貨や資産が抱えるインフレリスクを回避し、州の財政を安定させるねらいがある。メイナード氏は、これにより州の財務基盤を強化し、将来世代に持続可能な経済を残すと説明している。
オクラホマ州は「戦略的ビットコイン準備法案」を提出した6番目の州となった。ビットコインの普及を目指す非営利団体「Satoshi Action Fund(サトシ・アクション・ファンド)」のCEO、デニス・ポーター氏のX投稿によると、さらに7州が同様の法案を準備または検討中であり、全米13州がビットコインを公的資産に加える動きを進めているという。
州ごとの独自政策が可能なアメリカでは、先陣を切ってビットコインを公的資産化すれば、「ブロックチェーン先進州」としてのイメージ向上が期待される。これにより、企業誘致や観光PR、さらには新たな投資家の参入が期待される。
また、「BlackRock(ブラックロック)」や「Fidelity(フィデリティ)」など大手資産運用会社がビットコインへの投資を拡大するなか、州としても機関投資家の動向にあやかりたい意向がうかがえる。デジタル資産が今後さらに広く浸透していくなら、早期参入が大きなリターンをもたらす可能性は否定できない。
一方で、州政府によるビットコイン投資にはリスクも伴う。連邦政府やSEC(米証券取引委員会)が暗号資産(仮想通貨)に対する規制を進める可能性がある。州議会で法案が可決されたとしても、連邦レベルでの規制が進めば計画が頓挫するリスクもある。
世界的にデジタル通貨が台頭する昨今、ビットコインを公的セクターが活用する流れは加速しつつある。「通貨インフレに対抗するには非中央集権の資産に一部を振り向けるべき」という発想は理解できるし、先行者利益を得られる可能性もある。
だが、失敗した際の影響は甚大だ。とりわけ公的年金や貯蓄口座などの資金を扱うなら、数%ほどの分散投資にとどめておくなど、リスク管理を徹底する必要がある。ペンシルベニア州の「10%まで」といった制限は、こうしたリスクに対応するための現実的な方策といえよう。オクラホマ州も同様のしくみを採用するか、今後の議論が注目される。
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