米金融大手JPMorgan(JPモルガン)、証券貸借プラットフォームのHQLAx、ブロックチェーン企業Ownera(オウネラ)の3社は7日(現地時間)、クロスレジャー対応のレポ取引ソリューションを共同で開始したと発表した。この革新的なソリューションにより、レポ取引業者は現金と担保を異なる台帳間で分単位の精度で即座に交換できるようになり、既に日次最大10億ドル規模の取引を実現している。
レポ取引(Repurchase Agreement:買戻し条件付売買)とは、金融機関が債券などの証券を担保として短期資金を調達する取引で、一定期間後に利息を付けて同じ証券を買い戻すことを約束する仕組みだ。銀行や証券会社が日々の資金繰りや流動性管理に不可欠な金融取引として世界中で広く利用されている。
分単位決済でリアルタイムレポ取引を実現
新ソリューションでは、トレーダーがJPモルガンで保有する現金とHQLAxプラットフォーム上の担保を、日中取引において分単位で指定した決済・満期時間で交換できる。JPモルガンの独自ブロックチェーン「Kinexys」上のブロックチェーン預金口座を通じて「J.P. Morgan Digital Financing」アプリケーションで現金決済が行われ、HQLAxプラットフォーム上の証券所有権と交換される仕組みだ。
オウネラのルーティング技術により、JPモルガンとHQLAxは取引実行から担保・現金のデリバリー・バーサス・ペイメント(DvP)交換まで、レポ取引の全ライフサイクルを複数の台帳間で正確にオーケストレーションできるようになった。これにより、レポ市場参加者は日中流動性の最適化が可能となる。
オープンプロトコルで業界全体への拡張を目指す
オウネラのルーターは、オープンな「FinP2P」プロトコルを使用して市場参加者をピア・ツー・ピア(P2P)で接続し、デジタルプラットフォーム間でのアプリケーションレイヤー・オーケストレーションを提供している。
このソリューションの真価は、機関投資家向け金融市場でデジタル化が進展する中での拡張性にある。当初から業界全体レベルでの運営を想定して設計されており、将来的には複数の取引所、担保源、デポジットトークン、ステーブルコイン、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を含むデジタル現金手段への拡張により、市場の分断化を軽減する可能性を秘めている。
業界関係者からの評価
JPモルガンのマーケット・デジタル資産担当エグゼクティブディレクター、ダン・フィリップス氏は「オウネラは機関投資家向けDLTエコシステムの有意義な成長を可能にする重要なユーティリティを提供している。HQLAxとオウネラとの協力により、顧客の日中レポニーズをさらにサポートし、新たな担保プールを活用していきたい」とコメントした。
HQLAxのソリューション・アーキテクト責任者であるリチャード・グレン氏は「このソリューションは顧客の日中流動性管理を変革し、精度とスピード、確実性とコントロールを提供する。これは真に相互接続された高効率なグローバルレポ市場に向けた重要かつ基盤的なステップだ」と述べている。
第1フェーズは既にライブ運用され、日次取引高が最大10億ドルに達しており、今後さらなる取引量の増加が予想されている。
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