金融庁は29日、「FinTech実証実験ハブ・決済高度化プロジェクト(PIP)」の支援案件として、貿易取引の資金決済にステーブルコインを活用する実証実験の支援を決定したと発表した。申込者はトレードワルツ、NTTデータ、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行の6社。PIPとしては4件目の支援案件となる。
輸出債権の買い取りを起点にステーブルコインで決済
トレードワルツによると、貿易取引では現在、信用状(L/C)や船荷証券(B/L)など多くの紙の書類が物理的にやり取りされている。書類の郵送や手作業による照合といった事務作業に、多くの時間とコストがかかっているという。
実証では、同社の貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz(トレードワルツ)」とステーブルコインの基盤を連携させる。輸出企業が貨物の内容や船積みを示す輸出書類をTradeWaltz上で銀行に提出し、銀行が輸出債権の買い取りを承認した情報を起点に、ステーブルコインで決済を実行する流れを想定する。この仕組みで、技術面と法令面の論点を検証する。
貿易取引全体には複数の資金決済が伴うが、今回はまず輸出企業と銀行の間の輸出債権の買い取りと資金決済を対象とする。使うステーブルコインは、参加する金融機関が共同で検討するものを想定している。
同社は、取り組みが将来的に輸入側の銀行や輸入者まで広がり実用化された場合、輸出企業は代金を受け取るまでの期間の短縮が期待できるとしている。銀行については、書類照合後の決済指図や入金確認、着金通知などの業務をデータ連携で効率的に処理できる可能性があると説明した。
6社の役割と今後の構想
各社の主な役割は以下のとおりだ。
| 企業 | 主な役割 |
|---|---|
| トレードワルツ | TradeWaltzの運営主体として、輸出書類の提出や銀行による確認、買い取り承認などの手続き機能を提供 |
| NTTデータ | TradeWaltzと連携し、買い取り承諾と同時に決済指図を行うシステムを構築、実務上の論点を検証 |
| みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行 | 貿易金融業務と決済業務の観点から、ステーブルコイン活用に関する業務運用・決済実務上の論点を検証 |
トレードワルツは、貿易業務の情報を電子データで一元管理するプラットフォームをSaaSとして提供している。NTTデータや3メガバンクを含む大手18社が共同で出資する。
今後は、電子船荷証券(eB/L)を含む貿易関係書類のやり取りとステーブルコインの連動や、スマートコントラクトを活用したエスクローサービスなども見据え、決済を含む貿易実務の効率化と高度化につなげる方針だ。
PIPの1件目は銀行によるステーブルコイン共同発行
PIPは、ブロックチェーン技術を活用した決済高度化の検討が国内外で進んでいることを踏まえ、金融庁が2025年11月7日にFinTech実証実験ハブの中に設けた、決済分野に特化した枠組みである。今回の案件は、ハブ全体では15件目の支援案件にあたる。
PIPの1件目は、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行、Progmat(プログマ)による実証実験だった。複数の銀行が共同でステーブルコインを発行し、三菱商事のクロスボーダー決済に使うもので、銀行を共同委託者、信託銀行を受託者とする信託契約に基づいて発行する。
今回の実証の期間は、9月から当面の間。金融庁は実験終了後、コンプライアンスや監督対応上の論点、一般利用者向けにサービスを提供する際の法令解釈に関する論点などを含む結果を、ウェブサイトで公表する予定としている。



