グレースケール「トランプ関税と市場変動がビットコインに追い風」──1970年代の金と比較分析

伊藤 将史
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

スタグフレーション下で「希少なコモディティ」として価値上昇に期待

米暗号資産(仮想通貨)運用会社「Grayscale(グレースケール)」は18日、米国の関税政策に端を発するマクロ経済環境の変化が、ビットコインにとって追い風となる可能性が高いとする市場解説レポートを発表した。

同レポートでは、関税の引き上げがスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)を引き起こす要因の一つになると指摘。スタグフレーションは伝統的資産のリターンにマイナスに作用する一方で、金のような希少性を持つコモディティにとっては有利に働く傾向があると述べている。

スタグフレーションが資産パフォーマンスに与える影響については、1970年代の事例を引き合いに分析。スタグフレーションに陥った当時、米国株式と長期債券の年平均リターンは約6%で、同期間の平均インフレ率7.4%を下回っていた。一方で、金は年平均で約30%の価格上昇を記録している。

1970年代の資産別の累積トータルリターン 出典:グレースケール
1970年代の資産別の累積トータルリターン 出典:グレースケール

ビットコインは1970年代には存在していなかったが、今後スタグフレーション下で金と同様に価値が上昇するかどうかは、「投資家がビットコインを金と同様の希少資産かつ金融資産として認識するかどうか」にかかっているとグレースケールは分析。その上で、ビットコインの基本的な特性はその可能性を示唆していると評価している。

また、ビットコインは直近の市場下落局面でも「リスク調整後ベースで株式市場をアウトパフォームした」として、資産分散の観点からポートフォリオへの組み入れ価値があると述べている。

具体的には、4月2日に米ホワイトハウスが新たな関税政策を発表したことを受けて市場が混乱。主要株価指数であるS&P 500は、その日から9日の関税一時停止発表前日までに約12%下落した。一方で、ビットコインの下落率は約10%にとどまった。

グレースケールは、ビットコインの価格ボラティリティがS&P 500の約3倍であることを踏まえ、仮に両者が1対1の相関関係にあった場合、S&P 500の12%下落はビットコインにとっては36%の下落に相当すると指摘。実際には10%の下落にとどまったことから、ビットコインは深刻な市場環境下でも相対的に安定した資産として機能したと結論付けている。

加えて、トランプ政権が仮想通貨業界を支援する方向で政策を転換しつつあることも、ビットコインの投資家層拡大につながっていると前向きに評価。こうしたマクロ経済の変化と投資環境の改善が、ビットコインの相対的魅力をさらに高める可能性があると結んでいる。

トランプ政権に振り回されて急激に市場が変化する中で、グレースケールのレポートは仮想通貨投資家にとって有益な視点を提供するものだ。今後のビットコインのパフォーマンスにも注目が集まる。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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