エセナ、ナスダック上場目指す新会社設立──2.6億ドルの資金でENA買い戻しへ

伊藤 将史
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

3.6億ドルを確保、一部をENA長期取得に充当

ステーブルコイン「USDe」を発行するプロトコル「Ethena(エセナ)」のエコシステムを支援する「Ethena Foundation(エセナ財団)」は21日、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて、新たな財務管理会社「StablecoinX Inc.(ステーブルコインエックス)」を設立し、ナスダック市場への上場を目指す計画を発表した。

この計画に伴い、ステーブルコインXは総額約3億6,000万ドル(約531億円)の資金調達を実施。そのうち2億6,000万ドル(約383億円)は、エセナのガバナンストークン「ENA」のロックアップ済トークン取得および市場での購入に充てられる。

今回の計画は、SPACである「TLGY Acquisition Corp.(TLGYアクイジション・コーポレーション)」と、エセナエコシステムをサポートするために新設された「StablecoinX Assets Inc.(ステーブルコインX・アセット)」が事業統合し、ナスダック市場に「USDE」のティッカーシンボルで上場することを目指すものだ。

この事業統合を支えるため、同社はPIPE(上場企業による私募増資)を活用。今回の資金調達ラウンドには、エセナ財団自身による6,000万ドルの出資に加え、「Dragonfly(ドラゴンフライ)」、「Pantera Capital(パンテラ・キャピタル)」、「Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)」、「Wintermute(ウィンターミュート)」といった著名な暗号資産(仮想通貨)ベンチャーキャピタルが参加している。

ENAの循環的取得スキームと長期保有計画

ENAの取得は、以下のような手順で実行される予定だ。

  1. ステーブルコインXは、PIPEで調達した現金2億6,000万ドルを使い、エセナ財団の子会社からロックアップされたENAトークンを購入する。
  2. エセナ財団の子会社は、その売却で得た現金2億6,000万ドルの全額を使い、今後6週間にわたって、公開市場でENAを買い付ける。

この買い戻しは、1日あたり約500万ドル(約7.4億円)のペースで実施される予定で、取得総額は現在のENAの流通供給量の約8%に相当する規模となる。

エセナの創設者であり、ステーブルコインXのアドバイザーも務めるガイ・ヤング氏は、「ステーブルコインXの財務プログラムは、エセナエコシステムへの機関投資家のアクセスを広げるためのマイルストーンだ」とコメント。株式市場の投資家が規制に準拠した形でエセナエコシステムにアクセスできる機会を提供する意義を強調した。

また、ステーブルコインXとエセナ財団は、長期的な協力関係を結び、ステーブルコインXが取得したENAは、財団の承認なしには売却・貸付・担保提供などができない「永久資本」としてバランスシート上で保有される。これにより、短期的な利益追求ではなく、プロトコルの長期的な発展と価値向上を目指すインセンティブが共有されると考えられる。

今回の上場計画とトークン買い戻しというスキームは、DeFiプロトコルが伝統的な株式市場から資金を調達し、エコシステムを成長させるための新たなモデルと言えるだろう。ENAの取得規模も大きいため、今後の価格推移を注視しよう。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.51円)

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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