米労働省が5日に発表した8月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加が22,000人にとどまり、市場予想を大きく下回った。失業率は4.3%に上昇し、労働市場の減速が鮮明となった。この結果を受け、FRB(米連邦準備制度理事会)が今月の会合で利下げに踏み切るとの観測が強まり、暗号資産(仮想通貨)市場も堅調な推移を見せている。
金利低下観測がリスク資産への資金流入を促す
米労働省によると、7月の雇用者数は79,000人増へ上方修正された一方、6月は13,000人減へと下方修正された。労働市場の弱さが一段と意識される形となった。こうした状況から、FRBは9月16~17日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げに踏み切るとの見方が優勢であり、一部では0.5%の大幅利下げを予想する声もある。
雇用統計を受けた金融市場では、金利低下への期待が広がり、リスク資産への資金流入が観測された。一般に利下げは借入コストを下げ、資金調達を容易にするため、投資家は株式や仮想通貨といったリスク資産に資金を振り向けやすいとされる。
今回も利下げ観測の強まりがビットコイン価格を押し上げ、一時11万3,000ドルを上回る場面があった。ただし、投資家の多くは大幅な上昇には慎重で、様子見の姿勢を崩していない。市場の関心は今月16~17日に開かれるFOMCに集まっており、FRBがどの程度の利下げに踏み切るのかが次の焦点となっている。
雇用統計の下振れは、金融緩和の可能性を示唆すると同時に、米経済の脆さを映し出している。仮想通貨市場は当面、利下げ期待の恩恵を受けやすいが、長期的には政策判断と景気の行方を見極める冷静さが不可欠である。投資家は短期的な値動きにとらわれず、金利、経済指標、規制動向を総合的に勘案した判断を行うことが求められる。
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