市場が求めるのは透明性の高いステーブルコイン
ドバイ国際金融センター (DIFC)の規制当局であるドバイ金融サービス機構 (DFSA)は24日、米「Circle(サークル)」が発行する米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン (USDC)」およびユーロ連動型ステーブルコイン「ユーロコイン(EURC)」を「認可されたクリプトトークン(Recognized Crypto Tokens)」として正式に承認した。
ドバイの動向はこれだから侮れない。DIFCにはすでに6,000社以上の企業が拠点を構え、金融、法律、テクノロジーなど幅広い分野で事業を展開している。この環境下でDFSAがステーブルコインを正式に認可したことは、デジタル資産の受け入れを加速する大きな一歩となる。ドバイは、従来の金融ハブとしての役割に加え、ブロックチェーンやデジタル資産を積極的に取り入れる姿勢を鮮明にしており、今後さらに資金と技術が集まる可能性が高まっている。
今回承認されたのは、サークルのUSDC(米ドル連動)とEURC(ユーロ連動)。USDCは透明性が高いステーブルコインとして知られ、定期的な監査を受けることで信頼性を確保している。今回、ユーロ圏をカバーするEURCも認可されたことで、異なる地域の企業や金融機関にとって規制の枠組みの中で利用しやすくなり、決済や送金手段としての信頼性が向上した。
ステーブルコインは、法定通貨と1対1で価値が連動し、ビットコインのような激しい乱高下が小さいという利点がある。「デジタル通貨の利便性」と「法定通貨の安定」を兼ね備える構造ゆえに、国際送金や決済インフラに組み込みやすい。一方で、過去には裏付け資産の不透明さが問題視されたこともあり、サークルが行う会計監査やコンプライアンス強化が今回の承認につながったと考えられる。
2022年にはアルゴリズム型ステーブルコイン「TerraUSD」が暴落し、市場がパニックに陥った。これを契機に、各国の規制当局が「ステーブルコインの安定性は本物か」と疑問を呈し、担保資産や透明性の重要性が再認識された。DFSAがUSDCとEURCを認可したことは、規制の枠組みの中で透明性の高いステーブルコインが求められる時代を象徴する出来事である。
UAEは、暗号資産(仮想通貨)市場の拡大を国策レベルで推進している。ドバイは欧米やアジアの金融ハブと競争しながら、先進的仮想通貨市場の整備を進めている。DFSAの迅速な認可により、ステーブルコインの合法的な利用範囲が広がり、国際的な金融機関やフィンテック企業が「使わない手はない」と考える下地が整いつつある。やがてこの流れが世界各地に波及し、法整備がさらに進む可能性も高い。
従来のSWIFT経由の国際送金は、処理時間や手数料の高さが課題とされ、土日祝日の処理遅延も避けられなかった。ステーブルコインはブロックチェーン上で24時間365日稼働し、法定通貨とペッグしているため、レート変動リスクを抑えながらスピードとコストを改善できる。さらに、仮想通貨全般のボラティリティを回避したい投資家にとっては、ステーブルコインが有力な退避先となる。承認されたステーブルコインの利用が拡大することで、規制の枠外にあるステーブルコインとの差別化が一層明確になる可能性がある。
ドバイの積極的な政策によって、中東地域が仮想通貨やブロックチェーンの新たなハブとなる可能性が高まっている。アジアや欧米の規制当局も追随を余儀なくされれば、世界規模で「ステーブルコインの正式承認と法整備」が進む契機となるだろう。ステーブルコインが国際金融システムと結合すれば、決済や送金の効率が向上し、新たな金融商品が次々と生まれる可能性もある。
フィンテック企業にとって、ドバイでの拠点設立は魅力的な選択肢だ。規制が明確で安心感があるうえ、ステーブルコインを使った金融サービスが作りやすい。さらに、DIFCでは法人税やキャピタルゲイン税の優遇措置が整備されており、企業にとって有利なビジネス環境が提供されている。こうした要素が相まって、ドバイのグローバル金融都市としてのステータスは一層高まるだろう。今回の動向は、世界の金融地図を塗り替えるインパクトを秘めている。
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