匿名性と利回りを一つのウォレットで実現
オンチェーンのプライバシー保護ソリューションを提供する「Common(コモン)」は29日、ウェブブラウザベースのアプリケーション「Common Web App」のメインネット版を正式にローンチしたと発表した。ローンチ当初は、「Aleph Zero(アレフゼロ)EVM」と「Arbitrum(アービトラム)」に対応する。
Common Web Appは、ユーザーが「MetaMask(メタマスク)」、「Rabby(ラビー)」、「Talisman(タリスマン)」といった既存のウォレットを接続し、簡単な操作で自身の暗号資産(仮想通貨)を「シールド(保護)」できるブラウザアプリである。これにより、複数のブロックチェーン上で資産を匿名化し、プライバシーを保護しながら管理・取引することが可能になる。
アプリは、プライバシー特化型ブロックチェーンであるアレフゼロが提供する「Shielder Network(シールダーネットワーク)」およびそのSDKを基盤技術として利用。ユーザーが中央集権型取引所やミキサーに頼ることなく、自身のオンチェーン活動を保護できるようにすることを目的としている。
コモンは、アレフゼロの開発元でもある「Cardinal Cryptography(カーディナル・クリプトグラフィー)」によって開発された。
「シールド」機能の仕組みと特徴
アプリの中核機能である「シールディング」は、以下のプロセスで機能する。
- ユーザーはウォレットを接続し、対応資産を「シールドプール」に預け入れる。
- プール内の資産は元のウォレットアドレスとの繋がりが断ち切られ、匿名化される。
- ユーザーは追跡不可能な状態で新しいウォレットアドレスに出金できる。
トランザクションは約1秒未満で完了し、ネットワーク手数料も平均的な取引で0.0003 AZERO(約0.0068円)と、非常に低い水準であることがコモンのウェブサイトで説明されている。
さらに、他のプライバシーソリューションと異なり、ユーザーの資金をミキシングしないため、監査やコンプライアンス目的での資金の出所の追跡も可能だ。
今後の展開
今後は、イーサリアムメインネットや「Base(ベース)」、「Berachain(ベラチェーン)」、「Sonic(ソニック)」、「Monad(モナド)」といった他のEVM互換チェーン及びL2ネットワークへの対応拡大が計画されている。
さらに、ロードマップとして以下の機能追加が明かされた。
- モバイルアプリ版のリリース(5月末予定)
- シールドされた資産で利回りを得る機能
- ステーキング報酬(プラットフォーム手数料の一部を分配)
- チェーン間でのプライベートな資産移動
- 法定通貨アクセス強化
今回メインネットで利用可能になったCommon Web Appは、これまで複雑だったオンチェーンでのプライバシー保護を、より手軽にするためのツールである。モバイルアプリ化や対応チェーンの追加も予定されており、今後の普及が注目される。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1AZERO=22.84円)