ビットコイン担保型ステーブルコイン「BTCD」、Elastosが発表──ラップドトークン不要のDeFi新モデル

伊藤 将史
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

8月1日にメインネットローンチを予定

DeFi(分散型金融)プラットフォーム「Elastos(エラストス)」は19日、ビットコインのみを担保とする新しい米ドル連動型ステーブルコイン「Bitcoin Dollar(BTCD)」を発表した。

BTCDの最大の特徴は、ラップドトークン(WBTCなど)や中央集権的な管理者を介さず、ビットコインのブロックチェーンの仕組みを活用して、安全かつ分散型に担保を管理できる点にある。

これまでビットコインをDeFiで利用する一般的な方法は、一度ビットコインを特定の管理者(カストディアン)に預け、その代わりにイーサリアムなどの別のブロックチェーン上で使える「引換券」のようなトークン(=WBTCなど)を発行するものだった。

BTCDは、このようなプロセス自体を不要とし、よりネイティブかつ透明な形でのBTC利用を実現する。公式ブログによると、BTCDは実際のビットコインを「P2WSHアドレス」にロックすることで完全に担保されるという。P2WSHとは、ビットコインネイティブのスマートコントラクト形式であり、ユーザーはこれにより、第三者に依存することなく、自らの資産管理権を保持したままステーブルコインを発行できる。エラストスネットワークとBTCDマイナーは、このロックされたBTCの存在をゼロ知識証明(ZKP)で検証し、BTCDの発行を自動で行う仕組みを支えるという。

BTCDの価格の安定性を保つためのメカニズムについて、エラストスは以下のように説明している。

  • BTCD価格が1ドルを上回る場合:ユーザーはBTCDを償却(burn)することで担保のBTCを引き出せるため、BTCDの供給量が減少し、価格は1ドルに近づく方向に調整される。
  • BTCD価格が1ドルを下回る場合:ユーザーはBTCを担保に新たなBTCDを発行(mint)して市場で売却できる。この結果、供給量が増えるが、同時に裁定取引が発生し、価格が再び1ドルに戻るよう調整される。

このモデルは、既存のステーブルコインと同様、市場メカニズムによる自律的な価格安定を前提としている。

BTCDプロジェクトは、ハーバード大学のイノベーション・ラボでインキュベートされたものであり、複数の第三者機関によるセキュリティ監査(SlowMistやCertikなど)もすでに完了しているという。なお、BTCDのメインネットでの正式ローンチは2025年8月1日に予定されており、Elastosの既存エコシステムとの統合も進められている。

今回の発表は、「BTCFi」という大きなトレンドの一環であり、今後のステーブルコイン市場に新たな選択肢を提示するものとなる。米ドル担保型が主流となっている現在のステーブルコイン市場で、新たにビットコイン担保型が広まるのか注視したい。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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