上半期で劇的進化:ブロック時間0.75秒、MEV攻撃95%削減を達成
BNBチェーンの開発チームは16日、今年上半期に実現した大規模な性能向上の成果と、2025年後半以降の技術計画を発表した。ブロック生成時間の短縮、ガス料金の引き下げ、不正行為の抑制といった成果を報告しつつ、2025年後半にはさらなるスケーラビリティ強化を通じて、分散型取引所(DEX)スワップで1秒あたり5,000件の取引を処理できる性能を目指すという。
BNBチェーンは、中央集権型取引所(CEX)レベルの操作性と速度を実現しつつも、分散型ネットワークの自律性やアクセス自由度を維持することを目指している。2025年上半期の取り組みでは、以下の3点が重点的に実施された。
- 高速化の実現
ブロック生成時間は3秒から0.75秒に、トランザクションの最終確定時間も7.5秒から1.875秒に短縮された。これにより、BNBチェーンは日次1,240万件の取引を処理し、記録的な1日では1,760万件の取引を達成。日次平均取引量は93億ドル(約1.4兆円)に達している。 - コストの削減
ガス料金の中央値は0.01ドルに低下し、ピーク時でも低コストで取引できるようになった。 - 取引の公正性向上
開発者連合「Goodwill Alliance(グッドウィル・アライアンス)」の取り組みにより、悪質なMEV(マイナーによる利益の搾取)を95%削減した。
2025年後半に向けた強化計画:スケーラビリティを10倍に
下半期は、DEXスワップで1秒あたり最大5,000件の取引を処理できる性能の実現を目指し、以下の取り組みが進められている。
- Rustベースのクライアント
イーサリアムの「Reth(レス)」をベースにした高性能なRustクライアントを導入。マルチスレッド対応により、ノード同期やメモリ使用効率を大幅に向上させる。 - Super Instructions(スーパー・インストラクションズ)の採用
頻繁に使われるスマートコントラクトの処理をまとめて最適化する「スーパー・インストラクションズ」を導入することで、全体の実行速度を高める。特にDEXでの取引やローンチイベント時に発生しやすい処理の混雑を緩和する狙いがある。 - StateDBの最適化
データの読み書きを管理する「StateDB」と呼ばれる中間処理層を最適化することで、実行時間の約30%を占めていた状態アクセスの最適化により処理速度を向上し、取引データの処理をより効率的に行えるようにする。
次世代BNBチェーン構想:2026年以降の展望
BNBチェーンは2026年以降、現在のアーキテクチャの限界を超えるため、「次世代チェーン」の構築に乗り出す。この新たなチェーンでは、分散型でありながら、ナスダックレベルの処理速度と安定性を持つブロックチェーン基盤を目指す。
具体的には、以下のような特徴が盛り込まれる予定だ。
- 150ミリ秒未満での取引確定:バイナンスなどの中央集権型取引所(CEX)や伝統的な金融取引所と同等の即時性を実現。
- 秒間20,000件以上の処理性能:複雑なスワップやリステーキングなども余裕を持って対応。
- アップグレード可能な仮想マシン:EVMの限界を超え、並列処理を可能とする次世代アーキテクチャ。
- ネイティブなプライバシー機能:トークンの送金やスマートコントラクトの実行において、高度な機密性を確保。
- 直感的なUXとWeb2レベルの操作性:マルチシグ、鍵のローテーション、シームレスな認証を標準化。
BNBチェーンは、分散型の原則を守りながらも、中央集権型取引所と同等の操作性・即時性を提供しようとしている点が特徴的だ。スーパー・インストラクションズやStateDBの最適化は、従来ボトルネックとされてきた部分への現実的なアプローチであり、”使えるブロックチェーン”としての条件を一つずつ満たしているように見える。
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