Stripe、Paradigmと共同で決済特化型ブロックチェーン「Tempo」極秘開発

木本 隆義
11 Min Read

金融テクノロジー企業「Stripe(ストライプ)」が11日、暗号資産(仮想通貨)に特化したベンチャーキャピタルの「Paradigm(パラダイム)」と提携し、新たなブロックチェーンを開発していることが判明した。

Bridge・Privy買収で整備進める決済網

この事実は、仮想通貨のロビー団体である「Blockchain Association(ブロックチェーン・アソシエーション)」の求人サイトに8月3日に掲載された広告から明るみに出たものである。

求人情報によると、このプロジェクトは「Tempo(テンポ)」と名付けられている。そして「パラダイムとストライプの協業によって構築される、高性能な決済特化型ブロックチェーン」と説明されている。どうやら、まだ世間の目に触れないステルスモードで動いており、チームはわずか5人という小規模なものらしい。もっとも、この求人広告は米経済誌Fortune(フォーチュン)からの問い合わせを受けて、両社がコメントを拒否した直後に削除された。火消しを急いだようにも見えるし、ハナから話題づくりのためのヤラセのようにも見えるが、「消せば増える」の炎上法則どおり、ネット上に一度浮上した情報はそう簡単には消えない。

関係者筋の話によれば、テンポは他のプロトコルに依存しない独立した「レイヤー1」のブロックチェーンだという。それでいて、最大のスマートコントラクトプラットフォームであるEthereum(イーサリアム)の言語と互換性を持つ設計であり、開発者にとっての利便性も考慮されているようだ。

ストライプがなぜ今のタイミングで、自らブロックチェーン開発に乗り出すのか? その背景には、同社が近年進めてきた仮想通貨分野への周到な布石がある。ストライプは今年2月、ステーブルコインのインフラ企業である「Bridge(ブリッジ)」を11億ドルで買収完了。これは同社にとって過去最大の買収案件であった。さらに今年6月には、仮想通貨ウォレット開発の「Privy(プリヴィ)」も買収している。

ブリッジの買収によって企業がステーブルコイン決済を導入する基盤を手に入れ、プリヴィの買収でユーザーが仮想通貨を管理するウォレット(財布)を確保した。そして今回のテンポ開発が事実であれば、ストライプは取引を処理するサーバー群、つまりブロックチェーンそのものまで自社でコントロールしようとしていることになる。これは、決済技術の根幹をすべて掌握しようとする壮大な計画の一環と見てよいだろう。

興味深いのは、パートナーであるパラダイムの存在だ。同社の共同設立者でマネージングパートナーのマット・フアン氏はストライプの取締役会にも名を連ねており、両社の関係は単なる投資家と投資先にとどまらない。今回の共同開発は、両社の深い信頼関係と戦略的な連携を物語っている。

ストライプはテンポで独自の仮想通貨を発行するかどうかなど、具体的な計画について一切公表していない。すべてはまだ厚いベールに包まれたままだ。だが、オンライン決済の世界で圧倒的な地位を築いた巨人が、次世代の決済インフラの中核を担うべく動き出したことだけは確かだろう。このプロジェクトが日の目を見る時、世界の金融システムは新たな局面を迎えることになるのかもしれない。

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。著書『マウンティングの経済学』ほか。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。仕事のご依頼はツイッターにて。 ツイッター:@t_kimoto
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