アーサー・ヘイズ氏「BTC、短期8万ドル下落も年末25万ドルへ」──機関投資家ETF需要は幻想と指摘

伊藤 将史
18 Min Read
画像はArthur Hayes氏公式mediumより引用
Highlights
  • アーサー・ヘイズ氏が最新エッセイで、BTCは短期的に8万~8.5万ドルへ下落後、年末に20万~25万ドルへ急騰と予測
  • 機関投資家のETF需要は「幻想」と断言、実態はベーシス・トレードで「ビットコインなどクソどうでもいい」と指摘
  • 米ドル流動性は4月以降10%縮小、政治家は「必ず金融緩和を選ぶ」と100%確信し長期強気を維持

アーサー・ヘイズ氏は18日、最新のエッセイ「Snow Forecast(雪予報)」を公開した。

「レトリック」と「現実」の乖離

同氏は、ビットコイン(BTC)の価格は「世界的なフィアット(法定通貨)の流動性を占う風見鶏」であると定義した上で、現在の市場の混乱は、政治家が発する「レトリック(修辞法)」と、観測される「現実」が乖離した結果であると分析した。ここで言うレトリックとは、「見せかけだけ好ましく見えるが現実はそうではない言葉」のことだ。

ヘイズ氏はまず、現在の市場を「北海道のスキーシーズンの雪予報」になぞらえ、天気予報(政治家の発言)が良くても、実際に雪が降る(流動性が供給される)かはわからない、という状況だと指摘。

トランプ政権が「利下げ」や「住宅市場の活性化」といった金融緩和的な「レトリック」を繰り返しているにもかかわらず、自身が作成した「米ドル流動性指数」は4月9日以降10%も減少しているという「現実」を指摘する。

「ETFによって機関投資家の資金が流入」という幻想

通常、米ドル流動性が10%も減少すれば、ビットコイン価格も下落するはずだ。しかし、同期間にビットコインは逆に12%上昇している。ヘイズ氏はこの「乖離」の理由を、「機関投資家によるETFへの大規模流入」という市場に広まった「ナラティブ(物語・幻想)」にあると断じた。

ヘイズ氏は、この「機関投資家の需要」という幻想を「全くの誤解だ」と強く否定する。

同氏は、ビットコインETF「IBIT US」の最大保有者リスト(ゴールドマン・サックスや大手ヘッジファンドが並ぶ)を提示し、彼らの本当の目的はビットコインの長期保有ではないと指摘した。彼らの狙いは、「CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)」のビットコイン先物をショートし、同時にETFをロングすることで、両者の価格差で安全に稼ぐ「ベーシス・トレード」であると分析。

「彼らにとって、ビットコインなどクソどうでもいい」としたうえで、「彼らが我々のサンドボックス(市場)で遊ぶのは、利益のためだ」と述べた。

この「幻想」による資金流入が、実際の流動性低下という「現実」を覆い隠し、価格を吊り上げていた。しかし現在、そのベーシスが縮小し、彼らが「素早くポジションを解消」したため、ETFは大規模な純流出に転じている。

さらに、価格上昇の大きな要因とされていたビットコイントレジャリー企業もプレミアム(mNAV=市場純資産価値)を失ったことで、ビットコインを買う「流れ」が終わり、「市場は現実に直面し始めた」というのがヘイズ氏の見立てだ。

政治家の「選択」とヘイズ氏の価格予測

「幻想」が剥がれ落ちた今、ヘイズ氏は「ビットコインは、現在の米ドル流動性の縮小という現実を反映するために下落しなければならない」と主張。

そして、トランプ政権はインフレに苦しむ有権者の声を聞き「金融引き締め」を続けるか、市場クラッシュを恐れる富裕層の声を聞き「金融緩和(=インフレ再燃)」に踏み切るか、という「選択」を迫られているとした。

そのうえでヘイズ氏は、「(選挙に勝つために)政治家は常に金融緩和を選ぶと100%確信している」と断言する。

この分析に基づき、ヘイズ氏は以下のように今後のビットコイン価格を予測した。

  • 短期予測:まず、S&P500が10%〜20%調整するような「信用イベント」が発生。この過程で、ビットコインは8万ドル〜8万5千ドルまで下落する可能性がある。
  • 長期予測:この金融危機が、政府とFRBに「金融緩和」を強制する。その結果、ビットコインは年末までに20万ドル〜25万ドルへと急騰する可能性がある。

そのうえで、自身のファミリーオフィス「Maelstrom(メイルストロム)」は、この短期下落に備え、「ファンドの米ドル・ステーブルコインの比率を高めた」と明かした。

短期下落の例外はZcash(ZEC)

ヘイズ氏は、この短期的な下落相場から唯一逃れ、上昇する可能性がある暗号資産として「Zcash(ジーキャッシュ、ZEC)」を挙げている。

その根拠として、AI、ビッグテック、政府による監視が広がる中で「プライバシー・メタナラティブ(プライバシーコインにこそ価値があるとする物語・共通認識)」が市場を牽引すると予測。

「(暗号資産市場の)時価総額3位、4位、5位が、USDデリバティブ(USDT)、何もしないコイン(XRP)、そしてバイナンス創業者CZ氏の集中管理型コンピュータ(BNB)であることは、我々の感性を害するはずだ」と述べ、ZECのようなプライバシー暗号資産がイーサリアムの次に位置すべきだと主張した。

最後にヘイズ氏は、中国の習近平国家主席も米国の金融緩和が確定した後に、自国の量的緩和を開始すると予測。

「世界二大経済大国のリーダーであるトランプ氏と習近平氏の両方がビットコインを価値あるものだと信じている(※直接的にこのような発言したわけではないが、金融緩和に向かう彼らの行動は結果的にビットコインの価値を高める、ということ)。それなのに、なぜあなたは長期的に強気ではないのか?」と述べ、エッセイを締めくくった。

短期的にはビットコイン市場も一旦下落するが、長期的には間違いなく強気であるというのが、ヘイズ氏の見解のようだ。

関連:ジーキャッシュ「1万ドル到達」予想は実現するか──アーサー・ヘイズ氏の的中率46%、11月誤情報も拡散
関連:「1 BTC=100万ドル、1ドル=200円に」アーサー・ヘイズ氏が高市新首相の経済政策を痛烈批判

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

JinaCoinメルマガ開始
Share This Article
2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA

厳選・注目記事

YouTube

あなたのプロジェクトを広めませんか?

JinaCoinでは、プレスリリースや記事広告、バナー広告など複数の広告を提供しています。詳しい内容は下記お問い合わせページよりご連絡ください。