米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは26日、ステーブルコインUSDTの安定性評価を従来の「4(制約あり)」から最低評価の「5(弱い)」に引き下げたと発表した。
格下げ要因は「高リスク資産の増加」
S&Pは、今回の格下げの主な理由として、USDTの準備資産における「高リスク資産」の増加を挙げている。
レポートによると、2025年9月30日時点で、USDTの準備資産に占めるビットコイン、金、担保付きローン、社債などの「高リスク資産」の割合は24%に達し、前年同月の17%から増加した。
同社は特に、準備資産としてのビットコイン保有に関する懸念を強調している。現在、テザー社が保有するビットコインの評価額は、USDT発行総額の約5.6%に相当する。これは、同社が不測の事態に備えて確保している余剰資金(過剰担保マージン)の3.9%を上回る規模だ。レポートは「ビットコイン価格の下落と他の高リスク資産の価値減少が重なれば、余剰資金だけでは損失を吸収しきれず、USDTが担保不足に陥る可能性がある」と指摘した。
また、その他の弱点として、資産管理やリスク選好に関する透明性の欠如、強固な規制枠組みの欠如、発行体の破綻から資産を保護するための分別管理の不備などが挙げられている。
テザーCEO、S&P格付けを一蹴「壊れた金融システムによる評価」
この評価に対し、テザー社のパオロ・アルドイーノCEOは27日、「S&Pによるテザーの格付けに関して言えば、我々はあなた方の嫌悪を誇りとして身にまとう」と強く反発した。
アルドイーノ氏は、「レガシーな金融機関向けに構築された古典的な格付けモデル」が、これまで「投資適格とされた企業の破綻を招いてきた」と指摘し、規制当局がそうしたモデルの客観性に異議を唱えている現状に言及した。
さらに同氏は、伝統的な金融システムを「壊れたシステム」と呼び、「テザーは金融業界で初めて、トキシック(有害)な準備資産(デフォルトリスクが高い資産や流動性が極端に低い資産など)を持たず、過剰資本を実現した企業だ」と主張。「それにもかかわらず極めて高い収益性を維持しているテザーは、裸の王様たちに恐れられる存在になっている」と述べ、S&Pの評価を一蹴した。
テザー社の最新の準備資産報告書によると、同社の準備金の大半は米国財務省短期証券(T-Bills)などの安全資産で構成されている。なお、かつて保有していたコマーシャルペーパーは2022年に大幅削減され、現在はほぼ含まれていない。
しかし、S&Pはビットコインや金、担保付きローンなどを、その価格変動の激しさや透明性の観点からリスク要因としてカウントし、格下げに踏み切った。今回の対立は「ビットコインを高リスク資産と見なすか、あるいは新たな価値の保存手段と見なすか」という、伝統的金融と暗号資産業界の根本的な視点の違いを浮き彫りにしたものと言えるだろう。
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