分散型取引所(DEX)「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」のネイティブステーブルコイン「USDH」の発行権を巡り、ステーブルコイン「USDe」を発行する「Ethena Labs(エセナ・ラボ、以下エセナ)」が提案書を公表し、その争いに加わった。
GENIUS法準拠ステーブルコインによる100%裏付けを提案
エセナは、10日にUSDHに関する提案書を公表。提案のなかで、USDHをステーブルコイン「USDtb」によって100%裏付ける計画を明かした。
USDtbは、米国の「Anchorage Digital Bank(アンカレッジ・デジタル・バンク)」との提携により、10月1日に発行が予定されている米国初の「GENIUS法」準拠ステーブルコインである。その準備金は、世界最大の資産運用会社「BlackRock(ブラックロック)」が提供するトークン化ファンド「BUIDL(ビルド)」によって間接的に裏付けられるとされている。
エセナは、規制に準拠した堅牢さを強調し、「数十億ドル規模のステーブルコイン発行を扱ってきた完璧な実績」を持つ自社こそが、ハイパーリキッドのパートナーとして最適だと主張している。
また、エセナは、USDHの準備金から生じる純収益の少なくとも95%を、ハイパーリキッドコミュニティの利益のために利用することを約束した。具体的な還元方法として、プロトコルの独自トークンであるHYPEの購入と支援基金への拠出、またはバリデータへの分配などを挙げている。
さらに、セキュリティ面では、単一の発行体に依存するリスクを軽減するため、ハイパーリキッドのバリデータから選出されたチームで構成される「保護者ネットワーク(Guardian Network)」を構築し、USDHの監視を行うことを提案。これにより、セキュリティインシデントが発生した場合でも、迅速に対応できる体制を整えるとしている。
なお、この提案に対し、「BitMEX(ビットメックス)」の共同創設者であるアーサー・ヘイズ氏がXで支持を表明している。
「USDHはエセナとのパートナーシップであるべきだ。USDeは仮想通貨ネイティブの合成ドルだ。これは完璧なパートナーシップだ」と述べ、「我々のための、我々によるものにしよう。銀行も米国債もクソくらえだ」とコメントしている(ただし、同氏の言い回しには常に皮肉やレトリックが含まれているため真意は不明)。
USDH発行権を巡っては、すでに「Paxos(パクソス)」、「Frax Finance(フラックス・ファイナンス)」、そして資産運用大手「VanEck(ヴァンエック)」などが参加する「Agora(アゴラ)」が名乗りを上げており、それぞれが収益の100%還元や機関投資家グレードのインフラなどをアピールポイントとして掲げている。
今回、エセナが参入したことで、この提案合戦はさらに激化することになる。どのチームがハイパーリキッドエコシステムの未来を担うのか、バリデータとコミュニティによる選択に大きな注目が集まる。
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