ステーブルコインUSD1の普及をねらう新興企業「Blockstreet(ブロックストリート)」の共同創業者カイル・クレマー氏は8月31日、暗号資産(仮想通貨)メディア「Decrypt(ディクリプト)」とのインタビューに応じ、「トランプ大統領の2期目が終わる頃には、USD1は世界で最も広く採用されるステーブルコインになっているだろう」と述べた。
トランプ氏支援のステーブルコイン、成長見通しに注目
「USDCが最初のターゲットだ」と、クレマー氏は語った。彼らの使命は、トランプ家の仮想通貨プロジェクトから生まれたこのUSD1を、仮想通貨市場だけでなく伝統的な金融市場にも浸透させることにあるという。
「World Liberty Financial(ワールドリバティ・フィナンシャル)」は 1年前に発足したプロジェクトで、そのステーブルコインであるUSD1は今年4月に発行されたばかりだ。仮想通貨データを提供する「CoinGecko(コインゲッコー)」によれば、その時価総額はすでに25億ドル規模にまで成長している。しかしながら、「Tether(テザー)」のUSDTが1,670億ドル、「Circle(サークル)」のUSDCが710億ドルであることを考えれば、その差は依然として大きい。
それでもクレマー氏が楽観的な姿勢を崩さないのには理由がある。「チーム、支援、そしてブロックチェーンコミュニティ全体の熱意」をその根拠として挙げる彼は、「世界中の多くの人々が、現トランプ政権の取り組みを信じられないほど称賛している」と語る。同氏によれば、多くの人々から寄せられる最初の言葉は「どうすれば協力できるか?」なのだという。
その言葉を裏付けるかのように、今年5月にはアラブ首長国連邦(UAE)の政府系投資会社「MGX」が、世界最大の仮想通貨取引所「Binance(バイナンス)」への20億ドル規模の投資を行う際に、USD1を選択した。クレマー氏は、USD1が単なる技術的利点だけでなく、政治的な「変化の象徴」として、各国の政府系ファンドや巨大な組織から魅力的に映っていると分析している。
無論、その道のりは平坦ではない。「JPMorgan(JPモルガン)」はステーブルコイン市場が2028年までに5,000億ドルに達すると予測するが、競争は熾烈を極める。テザーやサークルといった既存の競合に加え、法整備が進めば「Citigroup(シティグループ)」や「Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)」のような伝統的金融機関の参入も考えられる。政治的な逆風も強い。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、このしくみを「桁外れの汚職の道具(staggering vehicle for corruption)」だと厳しく非難している。
こうした喧騒の中、ワールドリバティ・フィナンシャルのガバナンストークンである「WLFI」が、9月1日から取引可能になる。これまで適格投資家に限定されていたトークンが一般に解放されるわけだが、一部のアナリストはその高い評価額が個人投資家に損失をもたらす可能性を警告している。
クレマー氏によれば、USD1の具体的な展開計画はまだ最終決定されていないものの、ワールドリバティ・フィナンシャルのチームが「非常に高い目標」を掲げていることは確かだという。彼は最後にこう締めくくった。「USD1は史上最速で成長しているステーブルコインであり、いずれテザーを追い越すまで、その勢いは続くだろう」。トランプ氏が支援するデジタルドル「USD1」が、仮想通貨市場の序列を本当に覆すことができるのか、世界がその行方を見つめている。
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