本人確認・不正防止プラットフォーム「サムサブ(Sumsub)」の最新調査によると、米国人の33%が暗号資産(仮想通貨)関連詐欺の被害を直接または間接的に経験していることが明らかになった。暗号資産の普及が進む一方で、詐欺やAI技術を悪用した合成ID詐欺が深刻化している。
Z世代・ミレニアル世代の被害率は約5割
調査では、過去12カ月間に米国成人の36%が暗号資産を利用したことが判明。特に若年層での利用率が高い一方で、詐欺被害も集中している。
- Z世代:46%が本人または知人が暗号資産詐欺の被害を経験
- ミレニアル世代:49%が同様の被害を経験
最も一般的な詐欺手口として、ソーシャルエンジニアリング(31%)、ポンジスキーム(30%)、偽のエアドロップ(30%)が報告された。このほか、フィッシング、なりすまし、ウォレット資金流出、ラグプルなども横行している。
平均被害額は約3,300ドル、AI悪用の合成ID詐欺も急増
詐欺被害に遭った回答者の最も深刻なケースでの平均損失額は約3,300ドル(約50万円)に上った。
さらに深刻なのは、AI生成のディープフェイクや偽造文書を使った「合成ID詐欺」の急増だ。回答者の35%がこうした詐欺に遭遇し、18%が直接標的となった経験を持つ。
サムサブの内部データによると、米国では2024年第1四半期から2025年第1四半期にかけて、全産業における合成ID文書詐欺が300%以上急増。ディープフェイク関連詐欺は700%増加している。
58%が政府規制強化を支持、プラットフォームへの信頼は低迷
暗号資産の普及が進む一方で、業界への信頼は依然として低い。従来の銀行と比較して暗号資産プラットフォームへの信頼が高いと答えたのはわずか26%で、54%が「信頼できない」と回答(うち41%が「まったく信頼できない」)。
こうした状況を受け、58%のユーザーが暗号資産プラットフォームに対する政府規制の強化を支持している。具体的には、ステーブルコイン発行と使用に明確なルールを定める「Clarity for Payment Stablecoins Act(決済用ステーブルコイン明確化法)」や、詐欺に対するユーザー保護を強化する「GENIUS Act」などの法案への支持が高い。
また、69%が「生成AIモデルを開発する企業は、その技術が詐欺に悪用された場合に責任を負うべき」と考えている。
損失の責任所在、3分の1は「プラットフォームが負うべき」
詐欺被害で資金を失った場合の責任所在について、33%が「プラットフォームが資金回復を支援すべき」と期待。一方、20%は「個人が損失を負うべき」と考えている。
サムサブのアナスタシア・シュベチコバ米州ビジネス開発責任者は「米国ユーザーは暗号資産プラットフォームの成功を望んでいるが、同時に説明責任と透明性も求めている。GENIUS Actのような立法措置は歓迎されるが、消費者保護と信頼構築には執行と明確性が不可欠だ」とコメントしている。
同社のイリヤ・ブロビン最高成長責任者は「詐欺の76%がオンボーディング段階の後に発生している。業界は標準的なKYCを超えて、ユーザージャーニーのあらゆる段階でプラットフォームとユーザーを保護する多層的な詐欺防止アプローチを採用しなければならない」と強調した。
今回の調査は2025年9月28日に米国成人2,000人を対象に実施された。
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