誰もが使えるステーブルコイン決済の普及へ
ステーブルコイン最大手「Tether(テザー)」は15日、フィンテック企業「Fizen(フィゼン)」への戦略的投資を発表した。この投資は、グローバルにおけるステーブルコインの実用性向上と、自己保管型(セルフカストディ)ウォレットの普及を目的としている。
フィゼンは、セルフカストディ型の暗号資産(仮想通貨)ウォレットとデジタル決済技術を提供する企業であり、ステーブルコインの利用を日常決済に統合するための革新的なソリューションを展開している。今回の投資により、フィゼンは複数のブロックチェーン上でのステーブルコインの統合を強化し、ユーザーにとってより効率的かつ直感的なデジタル資産の保管・送金・決済環境を提供することが可能になる。
世界銀行の「Global Findex Report(グローバル・フィンデックス・レポート)」によると、世界には依然として銀行口座を持たない人々が数億人存在する。その主な理由として、「最寄りの金融機関までの距離」と「必要書類の不足」が挙げられている。テザーは、こうした人々にも金融サービスへのアクセスを提供する手段として、ステーブルコインの普及を推進している。
しかしながら、ステーブルコインの導入には課題も残る。手数料の低さ、セキュリティの高さ、即時性といった利点がある一方で、商業利用、特に小売業者による導入は課題が残っている。こうした課題に対し、フィゼンはQRコードやカードリーダーなど、既存の決済インフラを活用して、消費者がステーブルコインで支払い、店舗側は即時に法定通貨で決済を受け取れる仕組みを構築している。
2024年にはQRコード決済の市場規模が3兆ドル(約428兆円)を超えると予測され、2025年には世界で22億人がこの決済手段を利用すると見込まれている。この成長を背景に、テザーとフィゼンの提携は、ステーブルコインによる決済の大衆化を加速させる可能性が高い。
テザーのCEOであるパオロ・アルドイーノ氏は、「我々はデジタル資産の責任ある利用を促進し、効率的で信頼できる金融ソリューションを世界中に提供することに注力している」と述べ、フィゼンの技術がセルフカストディとデジタル決済の橋渡しとなることを評価した。
また、フィゼンの創業者兼CEOであるレオ・ヴー氏は、「ステーブルコインは今後の金融包摂を加速させる原動力になる存在だが、直感的なユーザー体験を提供するアプリケーションが不足している」と語り、フィゼンの役割に自信を見せた。
この投資は、ステーブルコインの実用性を高め、銀行口座を持たない人々への金融サービス拡大に資する重要な一歩である。ステーブルコインが日常の商取引で自然に使われる未来に向け、フィゼンの技術とテザーの強力な資本力が融合することで、ブロックチェーン技術が真に「日常の金融」に近づくことが期待される。
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