分散技術活用でクラウド不要|6千円スマホでも翻訳ソフトが稼働
暗号資産(仮想通貨)ステーブルコイン最大手の「Tether(テザー)」が、プライバシーを重視したローカルAI開発キット「Local AI SDK(ローカルAI SDK)」を発表した。
Paolo Ardoino(パオロ・アルドイーノ)CEOは27日、「昨日のLugano Plan ₿イベント(注)で、テザーのローカルAI開発キットのプレビューを発表した。このキットはプライバシーに焦点を当て、ピアツーピア技術を活用している。コードを一度書けば、40ドルの携帯電話から最新のスマートフォン、ノートパソコン、H100を搭載した大型サーバー、スマート冷蔵庫、車載エンターテインメントシステムまで、あらゆるデバイスで実行できる」とXで述べた。
このAI開発キットの主な特徴は以下の通りだ:
- プライバシー重視:P2P(ピアツーピア)技術を用いることで、ユーザーデータが中央サーバーに送信されることなく、ローカルなデバイス上で処理される。
- 分散化処理:データはピアツーピアネットワーク上で分散化され、単一障害点のリスクを低減する。
- モジュール型:Marian(マリアン)やLlama(ラーマ)など、さまざまなAIモデルをサポートし、開発者はニーズに応じた最適なモデルを選択できる。
- 多様なデバイスに対応:低価格スマートフォンからハイエンドマシンまで、幅広いデバイスで動作する。
- オープンソース:テストを経て、オープンソースとして公開される。
テザーは、開発キットを十分なテスト期間を経た後にオープンソースとして公開する予定だ。これにより、プライバシーを重視する開発者やユーザーがより簡単にAI技術を活用できるようになる。
アルドイーノCEOは「このキットにより、ユーザーはすべての操作をデバイス上で実行でき、個人データが第三者と共有される心配がない」と強調した。同社はデモンストレーションで、完全にローカルで動作するプライバシー重視の翻訳アプリを紹介し、実用性を示した。
また、コインベースも最近、イーサリアムのレイヤー2ネットワークである「Base(ベース)」上に、完全にオンチェーン化されたAIエージェントを導入した。これらのAIエージェントは、仮想通貨ウォレットの管理、DeFiプラットフォームとのやり取り、自律的な取引の実行が可能である。
これらの動きは、AI技術が仮想通貨業界に大きな変革をもたらす可能性を示している。テザーのローカルAI開発キットは、プライバシーと分散化を重視したAI開発を促進し、仮想通貨業界のさらなる発展に貢献することが期待される。
一方で、仮想通貨取引所のニュースサイト「Bitget.com(ビットゲット・コム)」は、テザーが米国当局による調査の噂に直面していることを報じている。同社はこの報道を否定しているが、市場参加者の間では慎重な見方が広がっている。テザーの規制環境への対応が、同社の技術革新や市場での地位にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。
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情報ソース:パオロ・アルドイーノ氏X / Bitget.com
(注:Lugano Plan ₿イベント:スイスのLugano(ルガーノ)市とテザーが共催する仮想通貨関連イベント)