SUI戦略を支える出資陣と新体制が明らかに
短期融資を中心とした米国のノンバンク型専門金融会社「Mill City Ventures III(ミル・シティ・ベンチャーズIII)」は28日、総額約4億5,000万ドルに上る第三者割当増資(私募)の実施で、複数の投資家と合意に至ったと発表した。
この動きは、特定の暗号資産(仮想通貨)を企業の主要準備資産とする「Sui Treasury Strategy(スイ・トレジャリー戦略)」を開始するための資金調達である。伝統的な金融サービスから特定の仮想通貨エコシステムへ、同社の事業構造そのものを根底から変える「ピボット」とも捉えられる。
今回の私募は、1株あたり5.42ドルで約8,300万株を発行する計画で、クロージングは2025年7月31日頃を予定している。驚くべきは、その資金使途である。純調達額の実に98%が、Suiブロックチェーンのネイティブ仮想通貨である「SUI」の取得に充てられるという。残りの2%で、従来の短期融資事業を継続する。つまり、同社はSUIを財務の中核に据えるという、大きな転換に踏み切ったといえよう。
この異例の戦略を主導するのは、ロンドンを拠点とするデジタル資産専門のヘッジファンド、「Karatage Opportunities(カラテージ・オポチュニティーズ)」だ。同ファンドがリード投資家を務め、さらにSuiエコシステムの普及を担う「Sui Foundation(スイ財団)」が同額の投資を行う。これは、プロジェクトの公式組織が、上場企業と組んで自らのトークンのための「トレジャリー戦略」を支援するという、かなり珍しい枠組みだ。両者は今後、技術やエコシステムの成長に関する情報を共有し、緊密な連携を図っていく。
新最高投資責任者(CIO)に就任予定のカラテージ共同創業者、スティーブン・マッキントッシュ氏は、「機関投資家向け仮想通貨とAIが臨界点に達する極めて重要な時期に、我々は船出する」と語る。そして、「Suiは、機関投資家が大規模に仮想通貨を扱う上で求める速度と効率性を備えている」と、その技術的優位性を強調した。
また、Suiの最初の貢献者である「Mysten Labs(ミステン・ラボ)」の共同創業者、アデニイ・アビオドゥン氏も、「未来は仮想通貨、AI、ステーブルコインにあり、それらすべてにスケール可能なインフラが必要だ。それがSuiだ」と強い期待を寄せている。
この動きには、「Big Brain Holdings(ビッグ・ブレイン・ホールディングス」)や「Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)」、「Pantera Capital(パンテラ・キャピタル)」といった、仮想通貨業界の著名な投資企業も名を連ねている。これは、今回の戦略に対する市場の高い期待を裏付けるものといえよう。経営体制も刷新され、取締役会会長にはカラテージ共同創業者のマリウス・バーネット氏、CIOにはマッキントッシュ氏が就任予定。また、「Coinbase(コインベース)」や「Square(スクエア)」での経験を持つダナ・ワグナー氏も、独立取締役として加わる見通しだ。
伝統的な金融サービスを提供してきた上場企業が、特定の仮想通貨エコシステムに深くコミットするという今回の決断は、金融市場における新たな潮流の始まりを告げているのかもしれない。その成否は、今後の仮想通貨市場全体の動向を占う上でも重要になりそうだ。
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