ポリゴンがトランプNFTにすり寄る下心
イーサリアムレイヤー2ブロックチェーン「Polygon(ポリゴン)」は21日、自社のX(旧Twitter)アイコンをドナルド・トランプ新米大統領のNFT画像に変更した。
本件は、「NFT」と「政治」の結びつきを象徴している。現在、「TRUMP」は世界最大のバズワードであり、NFT市場の盛り上げの触媒となっている。
トランプ氏のNFTが注目を集める理由は、その政治的メッセージ性の強さにある。単なるデジタルアートやコレクションを超え、支持者にとっては「政治献金」や「支持表明」の手段となり得る点が特徴だ。NFTというデジタル資産が持つ投資価値に、政治的な意義が上乗せされることで、従来のアート系NFTとは異なる熱量が生まれている。
ポリゴンがトランプNFTに注力するのは、主に二つの目的があると考えられる。
- トランプ側:ブランド力と政治的影響力でNFT販売を加速
- ポリゴン側:トランプ氏を起点とした露出拡大とユーザー獲得
政治家とブロックチェーンのコラボはスキャンダラスな面もあるが、宣伝効果は高い。「Xアイコンの変更」というわかりやすい仕掛けは、「トランプNFTとは何だ!?」という新規層の関心を引き込みやすい。
NFT市場は2021~23年にかけて熱狂のピークを過ぎたとされてきたが、著名人の参入によって再び注目を集めつつある。トランプ氏の名声や政治色を前面に打ち出すことで、「政治とNFTが絡むとどうなるのか」という新たな切り口が生まれる。企業が著名アーティストとコラボするように、ブロックチェーンでも同様のマーケティング手法が有効とみられる。
一方、トランプ氏への評価は賛否が激しく、ポリゴンが同氏のNFTプロジェクトと距離を近づけることに対し、X上では「政治色が強すぎる」との否定的な声も上がっている。とはいえ「新しい試みを歓迎する」という肯定的な見方も存在し、この分岐は今後の規制動向や市場の成熟度によって変化していくと考えられる。
暗号資産(仮想通貨)やNFTをめぐる米国での規制強化は、プロジェクトの継続性や投資家保護の観点で大きな問題となる。SEC(米証券取引委員会)による取り締まりの可能性など、政治的な文脈が加わると一層注視される立場に置かれる。ポリゴンは技術力と「規制への対応」を強調することで、新旧のステークホルダーの信頼を得ようとしている。
トランプNFTとポリゴンのタッグは、NFT市場の再活性化やユーザー層の拡大、そして強い話題性を喚起する好例だ。結局のところ、仮想通貨市場では「注目を集めてナンボ」が勝敗を左右してきた経緯がある。今回のアイコン変更は、ポリゴンがそのゲームを熟知したうえで行ったブランディング戦略の妙手といえるだろう。
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