即時買取による循環が取引拡大の要因に
ブロックチェーン分析プラットフォーム「Dune(デューン)」のアナリストであるzkayAPE氏は24日、トークン化されたポケモンカード(ポケカ)がSolana(ソラナ)ブロックチェーン上で活発に取引されているとの分析を公開した。
公開したデータによると、この新しい市場は、総取引高9,500万ドル(約139億円)、総収益640万ドル(約9.3億円)を超える規模にまで急成長しているという。
zkayAPE氏は、この市場の成長を牽引しているのは「ガチャと呼ばれる仕組み」であると指摘。ガチャは日本ユーザーにとっては馴染み深い仕組みだが、あらためて説明すると「中身がランダムなカードパック販売」のことだ。このガチャに費やされた金額は、セクター全体で5,000万ドル(約73億円)を突破しており、市場の主要な収益源となっている。
さらにzkayAPE氏は、このガチャシステムにはユーザーが引き当てたカードをプラットフォーム側が市場価値の80~85%ですぐに買い戻す「即時買い取り」機能が備わっている点も解説。これにより、ユーザーが不要なカードを即座に資金化し、再びガチャを引くというサイクルが高速で回転しているとした。同氏は「射幸性の高いゲームループがユーザーの高い消費額を支えている」と分析している。
市場の主要プレイヤーと収益構造
現在、この市場の中心には、デューンで分析された3つの主要プラットフォームが存在する。

- Collector Crypt(コレクター・クリプト):この分野の先駆者であり、市場のフロントランナー。累計で625万ドル(約9.1億円)以上の収益を上げており、月平均でも120万ドル(約1.8億円)を超える。ガチャだけで約4,950万ドル(約72億円)が消費されており、3,004のユニークウォレットから、ユーザーあたり平均16,500ドル(約241万円)という驚異的な金額が費やされている。
- Phygitals(フィジタルズ)、TCG Emporium(TCGエンポリアム):新規参入のプラットフォーム。ガチャの消費額はそれぞれ66.5万ドル(約9,711万円)、16.3万ドル(約2,380万円)を記録しており、小規模なユーザーベースながらも、高いユーザー定着率と消費額となっている。
二次流通市場も活発化
ガチャだけでなく、特定のカードをユーザー間で売買する二次流通市場も成長を見せている。

取引高はガチャに及ばないものの、セクター全体の二次流通市場における取引高は合計で44万ドル(約6,400万円)に達している。「マリオピカチュウ」のカードが11,300ドル(約165万円)、「ポンチョピカチュウ」が9,300ドル(約136万円)で取引されるなど、高額な売買事例も報告されているという。
なぜブロックチェーン上で取引するのか?
zkayAPE氏は、トレーディングカードのデジタル化とオンチェーン管理が、Web2(既存のインターネット)が抱える問題を解決する可能性があると指摘する。
- 流動性の断片化:プラットフォームごとに分断されていた市場が、ブロックチェーン上で統一される。
- 詐欺のリスク:現実世界のオリパや「Rip & Ship(開封配信)」で横行する詐欺のリスクを排除。
- 高額な手数料:「eBay(イーベイ)」などのマーケットプレイスが課す高い手数料を削減。
zkayAPE氏は、この市場がまだ黎明期にあり、巨大なトレーディングカード市場全体のほんの一部に過ぎないとしながらも、少ないアクティブユーザー数に対してユーザーの消費額が非常に高いことから、「プロダクトマーケットフィット」の兆候が見られると分析している。プロダクトマーケットフィットとは、「製品(サービスや商品)が特定の市場において適合している状態」のこと。つまりトレーディングカードのデジタル管理とそのオンライン市場が、ユーザーから受け入れられ、今後も成長していく可能性を十分に持っているという見解である。
現実世界の資産やコレクティブル(収集品)をブロックチェーン上でデジタル化・取引する取り組みは、Web3業界の中でも近年注目を集めている分野の一つだ。ポケモンカード市場がこの流れの先陣を切る存在となるのか、今後の成長が期待される。
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