ビットコイン建て生命保険会社「Meanwhile」、DeFi系VC主導で4,000万ドル調達

木本 隆義
13 Min Read
画像はMeanwhile公式サイトより引用

保険料・保険金・準備金をすべてビットコインで運用

バミューダを拠点とする生命保険会社「Meanwhile(ミーンホワイル)」は10日、シリーズA資金調達ラウンドで4,000万ドルを調達したと発表した。

ミーンホワイルは、保険料、保険金支払い、準備金のすべてをビットコインで運用するというユニークなビジネスモデルを持つ生命保険会社である。前回のシードラウンドでの調達額=約2,050万ドル、今回のシリーズAでの調達額=4,000万ドル、そして企業評価額=1億9,000万ドルという数字は、市場の関心の高さを物語っている。

では、なぜ今ビットコイン建ての生命保険が求められているのか? 世界的なインフレの進行と法定通貨の価値低下という背景において、「発行枚数が限定されたビットコインは相対的に価値を保つ可能性が高い」と考える人々が少なからず存在するからだ。

かかる状況下で、ミーンホワイルは契約者との取引のすべてをビットコイン建てで行うという大胆なビジネスモデルを展開している。ビットコインの価格変動リスクは依然として無視できないが、同社は「インフレリスクのヘッジ」「従来の金融システムの行き詰まり」「ビットコインの将来性」といった要素を強調している。

今回のシリーズAのリードインベスターが「Framework Ventures(フレームワーク・ベンチャーズ)」と「Fulgur Ventures(フルグル・ベンチャーズ)」であることは、この投資が分散型金融(DeFi)とビットコインという専門領域に根差していることを示唆している。シードラウンドでは、「OpenAI(オープンAI)」のサム・アルトマン氏らを含むテクノロジー系の著名投資家が多数参加していたが、その顔ぶれは多様で、スタンスや狙いがやや見えづらかった。一方、今回の投資家構成からは、ミーンホワイルのビジネスモデルが初期段階を終え、本格的な成長期に入ったという市場の認識がうかがえる。投資家たちは、単なる投機的な夢ではなく、現実的な収益化の可能性をこのモデルに見出しているのだ。

企業評価額は、シードラウンドから2年弱でほぼ倍増しており、バミューダ金融庁(BMA)のライセンス取得や、ビットコイン建てプライベートクレジットファンドの立ち上げといった事業拡大の進捗を反映している。規制当局の承認は、金融サービスを提供する上での信頼性を高めるうえで欠かせない。

懸念材料もある。ビットコインの価格変動リスクは依然として大きく、保険契約者にとっては、保険料支払い時と保険金受取時のビットコイン価値は日ごとに大きく変動する。また、グローバル展開にあたっては、各国の税制やビットコインの性質に対する認識の違いといった課題も存在している。

生命保険は、長期的な視点を必要とする商品であり、その基盤にビットコインを据えることが持続可能かどうかは、まだ明確な答えが出ていない。ビットコインが基軸通貨的な役割を担う可能性も否定できない一方で、新たな技術革新により代替されるリスクも考慮しなければならない。

だが、同社CEOのザック・タウンゼント氏が指摘するように、王者・米ドルでさえ過去5年間で価値を大きく失っているのだ。現状において、インフレに苦しむ人々にとってビットコイン建ての生命保険は十分魅力的な選択肢となりうる。特に、法定通貨に対する不信感が強い地域においては、その傾向が顕著だろう。

結論として、ミーンホワイルの挑戦の成否は、ビットコインが今後社会にどれだけ浸透し、価値を安定させられるかに大きく依存する。今回の4,000万ドルの資金調達は、同社の野心と市場の期待値を示すものだ。

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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