全国でWeb3技術を活用した地域活性化の取り組みが広がる中、香川県・小豆島では、DAO(分散型自律組織)とNFTを用いた古民家再生プロジェクトが進行中です。「Re. Asset DAO(リアセットDAO)合同会社」が主導するこの取り組みでは、国内外の投資家から約1,700万円を調達し、地域資源の再生と新たな観光の形を模索しています。
小豆島・土庄町とは?

香川県の瀬戸内海に位置する小豆島は、オリーブ栽培の発祥地として知られ、自然や食文化に恵まれた観光地としても高い人気を誇ります。一方で、人口減少や空き家の増加といった課題も抱えており、地域資源の利活用が求められています。
プロジェクトの舞台となる土庄町本町エリアは、小豆島の玄関口・土庄港にほど近い中心街で、かつてのにぎわいを残すまち並みが特徴です。古民家や商家が今も多く残されており、地域資源としての活用が期待されてきました。
「Re. Asset DAO合同会社」とは?

香川県高松市を拠点とする「Re. Asset DAO合同会社」は、Web3技術を活用した不動産再生を手がけるスタートアップです。DAOの仕組みを活かし、空き家や古民家の共同保有・運営を可能にするプラットフォームを構築しています。
NFT(非代替性トークン)やトークンを用いた小口出資モデルにより、地域外の人々も参加しやすい仕組みを整備。宿泊施設などを“共につくる”体験を通じて、関係人口の創出と地域経済の循環を目指しています。
「囲み宿こわね」プロジェクトとは?

「囲み宿こわね」は、土庄町本町にある築約100年の古民家をリノベーションし、一棟貸しの宿泊施設として再生するプロジェクトです。梁や土壁など、建物の風合いを生かした設計が特徴で、サウナやカフェの併設により、滞在型の観光体験を提供します。
2025年6月のオープンを予定しており、資金はDAOを通じて国内外の支援者から約1,700万円を調達済み。地域と投資者の共創によって育てる“まちの宿”として注目を集めています。
プロジェクトの仕組み

プロジェクトでは、社員権NFTや宿泊会員NFTといった複数のトークンを用いた独自の運営モデルが採用されています。出資者はDAOの一員として、運営方針の決定に関与できるほか、宿泊施設の利用や収益分配に応じた配当ポイント、報酬ポイントなどの特典を受けることができます。
たとえば報酬ポイントを使うことで、提携施設の宿泊料金が最大67%割引になるなど、経済的メリットも設計されています。
提携施設の紹介
Re. Asset DAOは、DAOによる宿泊事業の展開に加えて、他地域の宿泊施設とも連携を進めています。

静岡県南伊豆町と下田市にまたがる「Hamabe」では、オーシャンフロントの立地に貸別荘5棟(6戸)を展開。いずれも国立公園内にあり、海を望む絶景や、歴史ある街並みの散策が楽しめる滞在型施設です。

京都府綾部市の「HOTEL AND SPACE」は、山あいに佇む古民家を改修した一棟貸しの宿。露天風呂やビリヤード台が備えられ、清流のせせらぎとともに過ごせる自然豊かな空間が魅力です。
これらの提携施設では、Re. Asset DAOでの活動によって得た報酬ポイントや配当ポイントを使うことで、最大67%の割引価格で宿泊することが可能となっています。
今後の展望と可能性
Re. Asset DAOは、今後も日本各地に残る未活用の古民家を対象に、DAOによる再生モデルを展開していく予定です。単なる不動産開発ではなく、DAOの仕組みによって地域と外部の人々をつなぎ、関与の輪を広げる“共創型のまちづくり”を目指しています。
空き家を地域文化の受け皿と捉え直し、所有から関与へと価値観を転換するこの試みは、Web3時代ならではの地方創生のモデルとして注目されています。
おわりに
小豆島・土庄町で始まったこのプロジェクトは、古民家という地域の資源に、DAOやNFTといったWeb3の仕組みを重ねることで、新しい価値と関わり方を育てようとしています。
地域の外からも人と資源をゆるやかに巻き込みながら、誰かが関わり続けられる仕組みをつくる。そんなDAOのあり方が、これからの地域づくりの風景を少しずつ変えていくかもしれません。