米国の地域銀行の業界団体である米独立コミュニティー銀行協会(ICBA)は2日、米通貨監督庁(OCC)とジョナサン・グールド通貨監督官を相手取り、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所に提訴した。暗号資産(仮想通貨)企業などに信託銀行の免許を認めるOCCの規則は国法銀行法の権限を超えているとして、取り消しを求めている。
ICBAの訴状、OCCの規則・解釈書簡・プロテゴの承認を争う
訴状によると、第2次トランプ政権のもとでOCCが承認または条件付き承認した信託銀行は21行で、そのうち少なくとも13行が暗号資産企業だ。
OCCは2025年12月、サークルが設立する「First National Digital Currency Bank」、リップル、BitGo、フィデリティ・デジタル・アセッツ、パクソスの計5件を一度に条件付き承認していた。
ICBAが訴状で違法と主張し、取り消しを求めている対象は次の3つ。
| 対象 | ICBAの主な主張 |
|---|---|
| 最終規則(3月2日公表) | 法律の権限を超えている。パブリックコメントへの回答が不十分で、方針転換の説明もない |
| 解釈書簡1176号(2021年1月11日) | 法律の権限を超えている。パブリックコメントの手続きを経ずに出された |
| プロテゴへの条件付き承認 | 法律の権限を超えている。金融システムへのリスクなどの指摘を検討していない |
ICBAはこれらの取り消しに加え、OCCが規則や解釈書簡を使って免許を付与・条件付き承認することの差し止めも求めている。取り消しを求めている個別の承認はプロテゴの1件だけだ。
訴状によると、プロテゴは2021年にも条件付き承認を受けたが、2023年に失効した。2025年5月に再び申請し、今年2月に条件付き承認を受けた。承認された事業の中心は、カストディ、取引、貸借の仲介、発行支援の各プラットフォームで、いずれも受託者としてではなく提供するとしている。
ICBAは損害として、資産25億ドル未満の加盟行2行が規制対応にそれぞれ年150万ドル(約2億3,702万円)超を費やしていると主張した。今年だけで、OCCの条件付き承認を受けた暗号資産企業に、それぞれ数十万ドル規模の取引を奪われたともしている。
OCCとICBAの争点は国法銀行法27条(a)の一文
争点は、1978年の改正で国法銀行法27条(a)に加わった一文だ。業務を信託会社の業務と関連業務に限るようOCCが求めた国法銀行であっても、それだけを理由に違法に設立されたことにはならない、という内容だ。
OCCは3月の最終規則で、特別目的銀行の要件にある受託業務の文言を、この一文に合わせて信託会社の業務と関連業務に改めた。信託と受託は別の意味だと説明している。訴状によると、OCCはこの一文を根拠に、預金も受託業務も行わない会社にも信託銀行の免許を出せるとしている。
ICBAは、この一文が指すのは受託業務を定めた92a条の範囲だと反論する。根拠に挙げたのが、1979年の第3巡回区控訴裁判所の判決だ。OCCは最終規則で、この判決の該当部分を傍論として退けていた。
ICBAはさらに、OCCが免許を出せるのは預金を受け入れる銀行、銀行向けの銀行、受託業務を行う信託銀行の3種類に限られるとした。重大な経済的影響を持つ権限には議会の明確な授権が必要だとする重大問題の法理(major questions doctrine)も、主張の根拠に加えている。
ソニー銀行の米信託子会社もOCCの条件付き承認を取得
日本企業も、この免許の取得を進めている。ソニー銀行は7月7日、米国の信託子会社の設立について、OCCから条件付き承認を得たと発表した。
親会社のソニーフィナンシャルグループが7月6日に提出した臨時報告書によると、子会社の名称は「Connectia Trust, National Association」で、資本金は4,000万ドル(約63億円)。事業の内容は、信託会社としての業務とこれに関連する業務としている。
ソニー銀行は、米ドル建てステーブルコインの発行・管理などの事業に向けて、日米当局の許認可を前提に2027年の開業を目指す。同行によると、申請したライセンスは預金・貸出・決済業務などの銀行業を営むものではない。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.01円)



