米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が22日、ジャクソンホール会議で利下げを「慎重に進める」との姿勢を示した。これを受けてビットコインは一時4,000ドル以上急騰した。流動性拡大への期待と、政策の不透明さによる警戒感が交錯するなか、今後の値動きに注目が集まる。

利下げと仮想通貨市場の関係
利下げは金融市場において流動性を高め、リスク資産への資金流入を促す要因となる。政策金利が下がれば、米ドル建ての資産(米国債や社債、ドル預金など)の利回りは低下し、相対的に株式や仮想通貨といった高リスク資産が投資対象として魅力を増す。そのため、利下げは一般的にビットコインを含む仮想通貨市場に追い風となりやすい。
もっとも、パウエル議長は講演で「金融政策は規定のコースにはない」と明言し、「データの評価とその経済見通し、リスクのバランスへの影響に基づいて決める。我々はこのアプローチから決して逸脱しない」と強調した。これは、利下げがあらかじめ決められた路線に沿って進むのではなく、経済指標次第で柔軟に判断されることを示す発言である。
そのため、利下げ期待が膨らむ一方で、市場は「利下げが確実に続く」と受け止めることはできない。不透明さが残る状況下では、仮想通貨市場も一方向の動きを強めにくい。
今回の利下げ観測の背景には、雇用統計の下方修正など米労働市場の弱さがある。さらに、トランプ政権の関税政策が物価動向に及ぼす影響も不確実性を高めている。パウエル議長自身も「関税による価格上昇圧力が持続的なインフレを誘発する可能性がある」と警戒感を示した。
仮想通貨市場はリスク資産の中でもボラティリティが大きく、こうした要因に過敏に反応する。利下げのペースが市場の期待に届かない場合には、短期的な売り圧力が強まる可能性も否定できない。
FRBの利下げは仮想通貨市場に追い風となるが、その効果は政策の一貫性と投資家心理に左右される。今回のように「慎重な利下げ」が示された局面では、市場は上昇と調整を繰り返すだろう。短期的な変動よりも、マクロ経済や金融政策の方向性を踏まえた長期的な視点での評価が重要になる。
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