Web3技術を活用した地域の取り組みが、全国で少しずつ広がりを見せています。今回紹介するのは、東京都練馬区・江古田の街をテーマにしたメタバースプロジェクト『はちゃメタ By ニチゲイ』。芸術系大学と鉄道会社、IT企業が連携し、学生ならではの自由な発想で街の魅力をデジタル空間に表現しました。
本プロジェクトには以下の企業・団体が参加しています:
- 日本大学芸術学部(日藝):学生による企画・デザイン・制作を担当
- 西武鉄道株式会社:地域連携施策の一環としてプロジェクトを支援
- 日本電子計算株式会社(JIP):プロジェクトの企画・運営支援、学生サポートを実施
- 株式会社Urth(アース):メタバース空間の構築を担当
江古田とは

江古田は、東京都練馬区にある文化の香る学生街です。アートや音楽が根付いたこの地域には、日本大学芸術学部(日藝)があり、多くの若者が日々創作に励んでいます。駅前には昔ながらの商店街が広がり、地域住民と学生との距離が近いのも特徴のひとつです。
一方で、地域外への情報発信や来訪促進には課題もありました。今回のメタバースプロジェクトは、そんな江古田の魅力を新たな視点から伝えるための試みでもあります。
株式会社Urthとは

本プロジェクトの空間制作を担った「株式会社Urth」は、東京都新宿区に拠点を置くメタバース開発企業です。2020年創業以来、ブロックチェーンやWeb3技術を活用した体験型コンテンツの開発を手がけています。
同社が提供するメタバース構築サービス「metatell(メタテル)」を通じて、地域や企業が自らのストーリーを発信できる場をつくることを目指しています。今回は、江古田の文化や街並みを学生たちの感性で表現する場として、技術的な基盤を提供しました。
「江古田メタバース『はちゃメタ By ニチゲイ』」とは

『はちゃメタ By ニチゲイ』は、江古田の街並みや文化をテーマにしたメタバース空間です。日藝の学生たちが企画からデザインまでを担当し、「江古田 × 日藝らしさ × 違和感」というユニークな視点で、バーチャル空間に新しい江古田を構築しました。
プロジェクトは2025年3月12日から公開され、西武池袋線の開業110周年を記念した地域連携施策の一環として実施されています。また、アートの街・江古田をキャンバスに見立てて地域活性を目指す「江古田キャンバスプロジェクト」や、学生主体で地域の課題解決と仮想空間づくりを進める「江古田メタバース・イノベーションプロジェクト」とも連動し、教育と地域、テクノロジーをつなぐ橋渡し役を果たしています。
プロジェクトの仕組み

『はちゃメタ』の中では、利用者がアバターとなって仮想の江古田を自由に散策できます。アバターは学生がデザインした「こたまる」「エコてんちゃん」などのオリジナルキャラクターから選べます。
昭和時代の江古田駅を再現したエリアには、当時の写真や「駅伝言板」があり、訪れた人が自由に思い出やメッセージを残せる仕掛けも。Web3の技術自体が前面に出るのではなく、体験として自然に地域と関われる設計になっています。
今後の展望と可能性
このプロジェクトは、アートとテクノロジーが交差する場所として、メタバースの新たな可能性を示しています。今後は他地域への展開や、観光・教育分野への応用も視野に入れられており、メタバースを活用した「地域の記憶の保存」としても注目されています。
また、将来的にはユーザーが主体となるコミュニティ運営やDAO的な展開へと発展する可能性もあります。地域とデジタルが、より柔軟につながっていく未来が期待されています。
おわりに
『はちゃメタ By ニチゲイ』は、江古田という街が持つ個性や文化を、学生たちの感性とWeb3の技術を通じて新たに描き出したプロジェクトです。技術が前面に出るのではなく、人や地域の想いを包み込むような空間づくり。そのあり方は、これからの地域 × テクノロジーのヒントになるかもしれません。