暗号資産(仮想通貨)市場が一時的な低迷を迎える中、ブロックチェーン全体における総TVL(預かり資産額)は増加の一途を辿っており、2021年のピーク時に迫るほどの顕著な成長を示している。

しかしその裏で、ブロックチェーンプロジェクト間での競争激化が進行している。ユーザーや資金、開発リソースの集中が特定のブロックチェーンに偏ることで、持続的な成長モデルを築けなかったプロジェクトが相次いで淘汰される厳しい市場構造が表面化しつつある。
成長市場の裏で淘汰進む、プロジェクト間格差が拡大
22日、レイヤー1ブロックチェーン「Kadena(カデナ)」は事業運営の停止を公式Xで発表した。運営側は市場環境の悪化を理由に挙げており、清算および移行対応のため最小限のチームのみを残すとしている。
カデナのブロックチェーンおよび独自トークン「KDA」は、事業停止後も存続する見通しだ。今後は運営組織の関与なしにネットワークを維持する新たなバイナリを提供するとしており、ノード運営者に対して早期アップグレードを行うよう投稿内で推奨している。
また、KDAの発行スケジュールに変更はなく、2139年までに5億6,600万KDA超がマイニング報酬として配布される予定だ。さらに、8,370万KDAが2029年11月までにロック解除される見込みである。とはいえ、市場の反応は冷ややかで、KDA価格は約0.09ドルまで急落し、これまでの下落傾向がより助長される形となった。

技術は残ったとしてもブロックチェーン存続の懸念は消えない
一方、イーサリアムのレイヤー2「Eclipse(エクリプス)」も苦境に立たされている。21日、エクリプスは同ネットワークで技術的障害が発生したものの、ユーザー報告がゼロだったと公式Xで発表。その理由を「単に誰も使っていないからだ」と皮肉交じりに説明した。
ネットワークがダウンした際、ユーザーからの苦情が殺到するのが一般的だ。今回のエクリプスの異常とも言える状況は、そもそもの利用者が極端に少ないため、ダウンしても誰も気づかないということを暗に示している。
エクリプスの投稿に対して、「投資したことも使ったこともない」「誰がこれに投資するのか」といった厳しい声が寄せられた。今回の一件で、エクリプスの利用者の少なさと市場からの関心の薄さが浮き彫りとなった形だ。
オンチェーン分析ツール「DefiLlama(ディファイラマ)」によると、エクリプスチェーン上のTVLは2025年2月の約4,450万ドルを最高値に現時点では大幅に減少している。

カデナやエクリプスのような事例は、市場不況ではなく、「選ばれなかったプロジェクトが姿を消す健全な淘汰の始まり」と捉えられる。たとえ技術が残ったとしてもユーザーと流動性が失われれば、その価値は急速に薄れていく。ブロックチェーン業界は次の成長局面に向け、質が重視されるフェーズへと移行しつつある。
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