EU、暗号資産取引所に報告義務──税務指令「DAC8」を1月1日施行

伊藤 将史
9 Min Read
画像はFreepikのライセンス許諾により使用
Highlights
  • EUが税務行政協力指令DAC8を施行し、暗号資産取引所に取引情報の報告義務を付与
  • 暗号資産取引データを加盟国税務当局が毎年共有し、国境を越えた税務情報交換の対象
  • 初年度は取引情報を翌年9月30日までに提出、EU居住者の暗号資産取引が報告対象

欧州連合(EU)は、暗号資産(仮想通貨)取引の透明性を高め、脱税や租税回避を防止するための税務行政協力指令の第8次改正「DAC8」を2026年1月1日に施行する。

国際的な税務情報共有を拡大、取引の透明性強化へ

今回の「DAC8」は、2011年に制定された税務行政協力指令(DAC)の八度目の改正にあたり、経済協力開発機構(OECD)が策定した国際基準「暗号資産報告枠組み(CARF)」をベースとしている。

同文書は「暗号資産は分散型の性質を持ち、国境を越えた取引が容易であるため、従来の税制では所得やキャピタルゲインを適切に把握し、税務コンプライアンスを確保することが困難である」という課題を指摘。EU加盟国間で情報の自動交換を可能にすることで、資産の隠蔽を防ぎ、公平な課税環境を整える狙いがあると説明している。

同文書が示すスケジュールによると、この指令の施行に伴い、報告対象となる暗号資産サービスプロバイダーには、2026年1月1日からEU居住ユーザーの取引データの収集を開始することが義務付けられる。収集された情報は事業者の所在国の税務当局へ送られ、その後、投資家が居住する加盟国の当局へと提供される仕組みだ。

初年度(2026年分)の報告は、対象年度終了後9カ月以内、すなわち2027年9月30日までに行う必要がある。また、EU域内で活動しMiCA(欧州暗号資産市場規則)の認可を受けていない事業者であっても、いずれか一つの加盟国で一括登録を行う必要があるとされている。

対象となる資産の範囲についても言及されており、MiCAで定義される一般的な暗号資産(ビットコインBTCBTC・イーサリアムETHETHなど)に加え、分散型の手法で発行された資産、ステーブルコイン、そして特定のNFT(非代替性トークン)まで網羅されている。

この動きはEU域内にとどまらず、税務目的の透明性および情報交換に関するグローバル・フォーラムの加盟国・地域のうち58が、2027年からの情報交換開始を表明している。G20首脳もこの国際的な枠組みを歓迎していることが、文書内で紹介されている。

これを受け、EU各国の事業者は、今後それぞれの国内法で定められる詳細な報告フォーマットを確認し、早期にコンプライアンス体制を整備することが求められている。

この厳格なルールの適用により、EUにおける暗号資産事業者の事業環境も大きく変化しそうだ。

関連:アーサー・ヘイズ氏、2026年初頭にビットコイン20万ドル予測
関連:金融庁、暗号資産の金商法適用を提言──インサイダー規制など包括的強化へ

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

JinaCoinメルマガ開始
Share This Article
2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA

厳選・注目記事

YouTube

あなたのプロジェクトを広めませんか?

JinaCoinでは、プレスリリースや記事広告、バナー広告など複数の広告を提供しています。詳しい内容は下記お問い合わせページよりご連絡ください。