規制整備と法案成立が強気ムードを後押し
ビットコインが史上最高値を更新し、暗号資産(仮想通貨)市場全体が再び活況を見せる中、仮想通貨関連企業の動向に注目が集まっている。ビットコイン財務戦略を大々的に掲げる筆頭企業「Strategy(ストラテジー)」を例に、各企業の仮想通貨領域へのコミットが自社の株主価値向上につながるケースは今や珍しくない。
そんな中、直近で勢いを見せているのが業界最大手の仮想通貨取引所「Coinbase(コインベース・NASDAQ:COIN)」だ。同社はグローバルな取引基盤と先進的なサービスを武器に、仮想通貨インフラの中核として確固たる地位を築きつつある。
テクニカル目線で見るコインベース株価の直近推移
コインベースの評価は、株価市場においても如実に反映されている。2025年初頭、同社の株価は300ドル付近で抑えられていたが、4月初めにかけて大きく下落を見せた。しかしその後、2024年9月につけた過去の安値ラインにサポートされる形で価格が反発し、日足レベルでのトレンドは再び上昇へと転じている。

5月末以降は280ドルラインがひとつのレジスタンスとして意識されたが、240ドル付近の底堅さが支えとなり、6月18日の大陽線形成によって上昇トレンドが明確になった。記事執筆時点での株価は、404.44ドルと前日比-2.22%で推移。18日には一時444.65ドルまで急騰し、2021年4月に記録した過去最高値である429.54ドルを突破した。
しかし、依然として高値圏での価格推移が続くため、一時的な利益確定による売り圧力には注意が必要となる。下落を支えるサポート帯としては、直近高値として捉えられる380ドルあたりが考えられるだろう。いずれにしても現在の価格帯は、このまま続伸するか、調整局面を見せるのかといった投資家の思惑が交差しやすいポイントだ。
規制整備と法案成立が強気ムードを後押し
コインベースの株価急騰の背景には主に、米国における仮想通貨規制の明確化がある。6月17日には、ステーブルコインの規制枠組みの整備を目的とした「GENIUS法案」が米上院で可決され、これが好材料として市場に捉えられた。このタイミングで株価は256.63ドルから299.32ドルまで上昇し、終値は295.29ドルと節目のレンジ帯を上抜ける結果となった。
さらに7月17日には、GENIUS法案および、デジタル資産に対して明確なルール付けを目的とした「CLARITY法案」が米下院を通過。仮想通貨市場の法的安定性への期待が一段と高まった。そして19日、ドナルド・トランプ米大統領がGENIUS法案に署名したことで、正式に法律として成立。この一連の法整備はコインベースにとって強力な追い風となり、株価を過去最高水準へと押し上げる材料となった。
今後の鍵を握る出来事と考えられるリスク
今後の展開として注目されるのは、同社が21日に発表した米国市場における「ビットコインおよびイーサリアムの永久先物取引」の提供開始だ。永久先物は仮想通貨市場における取引量の大半を占める。これが米国内で提供されることで、取引所としてのコインベースの存在感がさらに増すことが期待される。
また、22日には米国の大手銀行「PNC Bank」との提携も明らかにされた。この提携にあたり、PNC Bankの顧客による安全かつ柔軟な仮想通貨売買を可能にしたサービス開発を予定。さらに、同行はコインベースに対して銀行サービスの提供を行うこととなった。伝統的な金融機関との連携は、仮想通貨の信頼性と普及度を引き上げる施策と言える。コインベースにとっては、ユーザー基盤の拡大と収益面でのポジティブなインパクトが期待できるだろう。
一方、リスク要因としては、コインベース株価が仮想通貨市場の値動きと連動する点が挙げられる。実際に2025年2月、ビットコイン価格が下落を始めた際はコインベース株価もその動きに呼応する形で下落に転じている。

コインベース等の仮想通貨取引所の収益モデルは、ビットコインを軸とした広範な仮想通貨市場の動向に影響を受けやすい。特に市場センチメント低下による取引活動の減少は、仮想通貨取引所にとって収入の軸となる手数料収入の減少に直結する要因だ。こうした点からも企業動向だけでなく、市場の流れも逐一把握しておくことがコインベース株の投資判断のうえで重要になる。
コインベースの株価は、法整備の進展や新サービスの展開といったファンダメンタルズに加え、仮想通貨市場全体の勢いに強く影響される。高値圏での価格推移が続く中、同社や仮想通貨市場の今後の動向が株価にどう影響していくのか、これからの値動きも注視していきたいところだ。
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