米大手暗号資産(仮想通貨)取引所「Coinbase(コインベース)」は24日、豪ドル建て「AUDD」とシンガポールドル建て「XSGD」の2種類のステーブルコインを新たに取り扱うと発表した。両銘柄は、コインベースにおいて初めて豪ドルおよびシンガポールドルに連動するステーブルコインとなる。取引開始は9月29日19:00(UTC/日本時間30日午前4時)を予定している。
ステーブルコイン市場は前年比50%成長、2兆ドル規模予測も
今回上場するAUDDは、オーストラリアの「AUDC Pty Ltd」が発行する豪ドル建てのステーブルコインで、1豪ドル=1 AUDDでの償還が可能な完全裏付け型の設計となっている。機関投資家向けのプログラマブルファイナンスを意識して構築されている点も特徴だ。
一方、XSGDはシンガポールの「StraitsX(ストレイツ・エックス)」によって発行されるステーブルコインで、シンガポール金融管理局(MAS)が策定中の「Single Currency Stablecoin(SCS)」規制枠組みに準拠していると認められている。
世界で拡大するステーブルコイン市場
ステーブルコインは、従来の国際送金に比べて高速かつ低コストで、効率的な送金手段として普及している。特に、現地通貨に裏付けられたステーブルコインは、為替リスクを意識することなく日常的に活用できる点で注目を集めている。コインベースは今回の上場について、「利用者が慣れ親しんだ通貨でシームレスに取引できることは、仮想通貨経済への参加拡大に直結する」と強調している。
同社がフランスの調査会社「Ipsos(イプソス)」に委託した調査によれば、シンガポールとオーストラリアにおける仮想通貨保有者の7割以上が、ローカル通貨建てステーブルコインの利用に関心を持っているという。両国のユーザーは、法定通貨からそれぞれのステーブルコインへの交換を無料で行えるようになる。
ステーブルコイン市場は世界的に拡大を続けている。2025年6月時点での市場規模は2,500億ドル(約37兆円)を突破し、前年比で50%増加した。今後数年で2兆ドル(約297兆円)規模に成長する可能性も指摘されている。また、2024年にはステーブルコインによる決済額が30兆ドル(約4,461兆円)を超えるなど、実需の拡大も顕著だ。
コインベースはステーブルコインについて「iPhone誕生の瞬間」に相当する普及局面に入っていると指摘し、AIエージェントによる自律的な支払いといった新たなユースケースにも期待を示している。同社は今回のAUDDとXSGDの導入が、ローカル通貨を基盤としたデジタル経済圏の形成を加速させる可能性があると強調している。
米ドル建てが中心だったステーブルコイン市場において、豪ドルやシンガポールドルといった地域通貨対応の選択肢が増えることは、利用者層の拡大と市場の多様化に資する動きである。特にアジア太平洋地域でのユースケース拡大を考えると、今回の上場は象徴的な一歩だといえるだろう。
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