大手資産運用会社が、ビットコインの大口保有者に対して、保有するビットコインをETF(上場投資信託)に変えるよう促していることがわかった。21日、ブルームバーグが報じた。中でも世界最大の資産運用会社「Blackrock(ブラックロック)」は、すでに約30億ドル(約4,553億円)相当のビットコインをETFに変換しており、ウォール街がデジタル資産を自らのバランスシートに取り込み始めていることを示している。
規制改革が追い風、大口投資家の資産がブロックチェーン外へ
この背景には、7月に米当局がビットコインETFに対して「インカインド取引」を正式に認可したことがある。これは投資家が現物のビットコインをETFに差し出し、その代わりにETFの持分を受け取るという仕組みである。この取引は、売却によるキャピタルゲインが生じないため、投資家は税金を発生させずに資産の形を変え、保有するビットコインをそのままETF口座に移すことができる。
この仕組みにより、これまで暗号資産ウォレットでしか扱えなかったビットコインが、証券口座で扱える金融商品となり、担保にして現金を借り入れたり、相続設計に活用したりすることができるようになった。
ブラックロックのデジタル資産部門責任者ロビー・ミッチニック氏によれば、多くの投資家が、既存の金融アドバイザーやプライベートバンクを通じて暗号資産(仮想通貨)を一元管理したいと考えており、「利便性」や「制度的安定性」がETF移行の大きな動機となっている。
同様に、ビットワイズ・アセット・マネジメントのテディ・フサロ社長も、8月に同社初のインカインド取引を実行したと明かす。「伝統的な金融システムの中に資産を置く利点はいまだに大きい」と指摘し、100万ドル(約1.5億円)の伝統資産と500万ドル(約7.5億円)のビットコインを別管理している投資家が、ETF化によって上位顧客サービスを受けられるケースを例に挙げた。
ETF専門会社アルファ・アーキテクトのウェス・グレイCEOは「伝統金融の世界では統合性やセキュリティが何世代にもわたり洗練されてきた。ビットコイナーもその利便性を理解し始めている」と指摘する。そして、「ビットコインは金融からの脱出を目的に生まれたが、今や最大の保有者がその中へ戻ろうとしている」と皮肉を込めて語った。
ETFを通じたビットコインの保有は、税務・法務面での管理を容易にし、富裕層の資産運用を効率化する。一方で、中央集権的な金融機関の影響力が再び強まる懸念もある。利便性と分散性のどちらを優先するかが、今後の投資家行動を左右するだろう。
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