シンガポールを拠点とする機関投資家向け暗号資産(仮想通貨)取引会社QCPキャピタルは19日、ビットコインが一時9万ドルを割り込んだ要因について、マクロ経済の圧力増大とETFからの資金流出が主因であるとの分析を公開した。
12月の利下げ観測が後退、ETF流出も重しに
QCPはまず、ビットコイン価格が9万ドルという重要な節目を割り込んだ要因について、次のように指摘している。
「利下げ期待の後退と、ETFからの継続的な資金流出がセンチメントの重石となっている。(中略)この動きは流動性の低下によって増幅され、マクロ環境の変化に対するビットコインの感応度が高まっていることを浮き彫りにした」。
つまり、金利観測の変化とETF売りという「マクロ圧力」に加え、市場の板が薄い(流動性が低い)状況が価格変動を大きくしたと分析している。
この売りの背景にあるのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策に対する市場予測の急激な変化だ。「今回の反落は、FRBへの期待が急速に再評価される中で起きた。(市場予測は)12月の利下げが『ほぼ確実』という見方から、『五分五分』へと変化している」とし、この変化がビットコインのような「デュレーション(金利感応度)の高い資産」に圧力をかけているという。
一方で株式市場については、ハイパースケーラー(巨大IT企業)による堅調な利益とAI主導の設備投資に支えられ、相対的に安定しているとした。
また、米国経済の現状について、パウエル議長が「12月の利下げは保証されていない」と慎重姿勢を崩さない中、「水面下では、米国経済は依然として『K字型(二極化)』の動きを示している。高所得者層の支出が底堅い一方で、低所得者層へのストレスは増大している」と分析。現在の状況については「リセッション(景気後退)というよりは、レイトサイクル(景気循環の最終局面)にある」との見解を示した。
その上で、「市場は今週発表される指標、特に労働市場データと、最新の空室率指標を組み込んだコンファレンス・ボードのLEI(景気先行指数)を注視している」とし、これらの指標が「ビットコインの下落が一時的なポジションの見直しを意味するのか、それともより広範なリスクオフへのシフトの始まりなのかを決定づける」と結んだ。
まとめると、直近の米国経済指標と、それに基づく12月の利下げ判断が、ビットコイン価格にも大きな影響を及ぼすという分析のようだ。
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