アーサー・ヘイズ氏「ビットコインはすでに底打ち、年内に20万ドル到達へ」

伊藤 将史
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画像はArthur Hayes氏公式mediumより引用

財政主導の流動性供給が背景に

暗号資産(仮想通貨)取引所「BitMEX(ビットメックス)」共同創業者で有名トレーダーのアーサー・ヘイズ氏は4月23日、自身のブログを更新し、ビットコイン(BTC)が直近安値74,500ドル(約1,056万円)で「局所的な底」を打ったと宣言したうえで、今後の強気な見通しを示した。

ヘイズ氏は記事のタイトルにもなっている「Ski Cut(スキーカット)」という比喩を用いて解説を始めた。スキーカットとは、スキーヤーが急斜面を滑り降りる前に、意図的に斜面に負荷をかけて小さな雪崩を誘発させ、その反応を見ることで斜面全体の不安定性を評価する安全確認技術である。

ヘイズ氏によれば、トランプ政権による4月2日の強硬な関税政策発表は、まさにこのスキーカットのようなものだったという。それは、不安定な世界金融市場という「急斜面」に対して意図的に負荷をかける「テスト」であり、その結果、市場に隠れていた脆弱性が露呈し、金融市場に「雪崩」のような混乱が引き起こされた。

特に米国債の先行き変動リスクを示すMOVE指数が、危険水域に達したと分析。しかし、これに対する米当局の迅速な政策転換、具体的には関税導入の一部猶予や、今年1月に就任したスコット・ベッセント財務長官による国債買い戻しプログラム拡大の示唆を見て、市場は最悪期を脱したと判断したという。

同氏によれば、市場はこの経験から「当局の反応パターン」を学習したため、今後の関税強化懸念はむしろ金融緩和期待につながり、ビットコイン価格を押し上げるという。

特にヘイズ氏が重視するのが、ベッセント財務長官が本格化させる姿勢を示している国債買い戻しだ。これは、財務省が国債を買い戻すことで市場流動性を供給し、実質的な金融緩和効果をもたらす。ヘイズ氏はこの「QE(量的緩和)ではないQE」がドル流動性を増加させ、ビットコインのようなリスク資産に資金が向かうと見ている。

ヘイズ氏は、現在の状況が2022年第3四半期と似ていると指摘する。当時のイエレン財務長官は、FRBの利上げ局面にもかかわらず、RRP(FRBが金融機関から資金を一時的に吸収する仕組み)に滞留していた市場の資金を、より利回りの良い短期国債発行を通じて活用し、結果的にRRPから市場へ資金が流れるように仕向けた。これも表向きのQEではなかったが、実質的に市場へ約2.5兆ドルの流動性を供給し、ビットコインはその期間中に約6倍上昇したという。

今回、ベッセント財務長官が本格化させる姿勢を示している国債買い戻しも、この2022年の事例と同様に「QEではないQE」として機能し、ビットコイン価格を押し上げるとヘイズ氏は主張する。

ここで重要になるのが、FRB(連邦準備制度理事会)の役割である。ヘイズ氏は、現在の米国は政府債務が巨額であるため、FRBはもはや独立して金融政策を決定できず、政府財務省の資金調達を円滑に進めることを優先せざるを得ない「財政支配(Fiscal Dominance)」の状態にあると断じている。そのため、FRBのパウエル議長は、インフレ抑制という自身の目標に反する可能性があったとしても、財務省主導による事実上の金融緩和策を止めることはできず、これを黙認、あるいは追認せざるを得ないだろう、とヘイズ氏は予測しているのである。

この「財政支配」下での実質的な流動性供給が継続するという見込みから、ヘイズ氏は今後の展開としてまずビットコインが市場を牽引し、過去最高値の11万ドル(約1,559万円)を突破、さらに20万ドル(約2,835万円)近くまで上昇する可能性があると強気の予測を示す。その後、ビットコインからアルトコインへの資金循環が始まると見ている。

注目すべきアルトコインとしては、単なる投機対象ではなく、実際にユーザーから収益を上げ、その利益をトークン保有者に還元しているプロジェクトを挙げている。これらの「宝石(gems)」については、別のエッセイで詳しく論じる予定だという。

ヘイズ氏の一連の分析は、米国の金融政策とビットコイン価格の関係という難解な問題に関して、理解を促すストーリーを示したものといえるだろう。同氏の予測どおり、ビットコイン価格の上昇が始まるのか注視したいところだ。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=141.75円)

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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