米国ワイオミング州ステーブルトークン委員会(Wyoming Stable Token Commission)は19日、州が発行する米ドルステーブルコイン「Frontier Stable Token(FRNT)」をメインネット上で正式にローンチしたと発表した。米国の公的機関によるブロックチェーンベースのステーブルコイン発行は初めてとなる。
米ドルと短期国債を裏付けに7チェーン展開
FRNTは個人、企業、そして機関に向けて、安全で透明性が高く効率的なデジタル取引手段を提供することを目的に設計されている。即時決済や手数料削減といった利便性の向上も視野に入れて開発されている。
裏付け資産は米ドルおよび短期米国債であり、トークン保有者の利益のために信託で保全される。また、法的に義務づけられた2%の超過担保を確保することで価格の安定性を高めている。
発行面では、クロスチェーン通信プロトコル「LayerZero(レイヤーゼロ)」と連携し、Arbitrum(アービトラム)、Avalanche(アバランチ)、Base(ベース)、Ethereum(イーサリアム)、Optimism(オプティミズム)、Polygon(ポリゴン)、Solana(ソラナ)の7つのブロックチェーンでの展開を開始している。
本プロジェクトは複数のパートナーにより支えられる。レイヤーゼロがトークン発行、「Fireblocks(ファイアブロックス)」がブロックチェーンインフラ、「Franklin Advisers(フランクリン・アドバイザーズ)」が準備資産の運用・管理を担う。さらに、「The Network Firm(ザ・ネットワークファーム)」が財務監査と月次証明を実施する。
流通面では、FRNTは今後数日のうちにソラナ上で、ワイオミング州に登記する暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken(クラーケン)」を通じて購入可能となる予定である。また、アバランチ上では「Rain(レイン)」が提供するVisaカードプログラムを通じて利用できる予定だ。一般提供の開始は、ワイオミング州知事オフィスおよびステーブルトークン委員会からの配布・告知により周知されるとしている。
ワイオミング州知事であり委員会の議長を務めるマーク・ゴードン氏は「ワイオミングは2016年以降、45を超える関連法案を可決し、ブロックチェーンや仮想通貨の規制において全米をリードしてきた」と強調。その上で「FRNTのメインネットローンチは、市民や企業に現代的で効率的かつ安全な取引手段をもたらす」とコメントした。
今回のFRNT発行は、米国州政府が公的にブロックチェーンベースのステーブルトークンを導入した初の事例であり、規制とイノベーションの両立を目指す試みとして注目される。今後は、利用者の需要喚起やグローバル市場での流通定着が課題となるだろう。
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