バヌアツ市民権、仮想通貨での取得が可能に──正式な支払い手段として認定

木本 隆義
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審査厳格化、資金源の説明が求められる

15日、バヌアツ市民権の購入について、「暗号資産(仮想通貨)での支払いが可能になった」とする最新発表があった。

これは重要な動きだ。ビットコインでもUSDTでもいいから、ぽーんと仮想通貨を送って「市民権ください」と言うだけ。あの南太平洋の小国が、こんな先端的な取り組みに踏み切るとは、いやもう、世界は分からない。同様の海外ビザ・市民権にまつわる”仮想通貨払い”解禁ネタは過去にもあったが、多くは「あれは政府が公認したわけじゃない」というオチがあった。結局のところ、移住エージェントや行政書士が仮想通貨を受け取ってドルに換金して納める、”ナンチャッテ仮想通貨払い”がほとんどだった。今回の「正式に可能になりました」という発表は、「政府指定エージェントを通じた仮想通貨支払いが認められた」ということを意味する。

だが、軽い気持ちで飛びつくと痛い目をみる。仮想通貨といえばマネロンがどうの、不正資金がどうの、世間の目も税務署の目も警察の目もきびしい。当のバヌアツも、過去にEUから「オイ、おまえんとこ審査甘いんじゃないのか?」ってツッコミをくらい、市民権取得者のビザ免除を2022年に停止された。その後も改善が見られないとして、2024年12月にはEUとのビザ免除協定が正式に取り消されている。そういう経緯で、いまは申請者の経歴や資金源について目を光らせている。資金の出どころを適当にごまかすと「ハイ却下!」となる。あくまでまっとうに資金源を説明できる人向けというわけだ。

だがもし審査をクリアできれば、バヌアツの市民権はわりとサクッと手に入る。不動産投資などの追加条件も不要で、申請から最短1ヵ月くらいで発給される(という話)。バヌアツ市民権は、今後EUとの相互ビザ免除が復活したり、仮想通貨の法整備が進んだりしたら、もっとおいしい付加価値がつくかもしれない。もちろん「いざ買ったけどあんまり使わなかった」という可能性も”移住あるある”だし、そのあたりは自己責任だ。投資というのはリスクとリターンの兼ね合いで決まるものだし、市民権なんて人生レベルの大きな決断はなおさらだ。

バヌアツが仮想通貨受け入れに本腰を入れたのは面白い。仮想通貨長者には、その利便性から魅力的な選択肢になるだろう。ただし審査強化や相場変動リスクがあるし、国際関係の動向も読めない。勢いで「BTC余ってるし買っちゃえ!」なんて軽率に飛びつくのはやめたほうがいい。しっかり移住エージェントと相談して、法的にも経済的にも安全確認してから動くべし。これはタイ移住者の私からの助言だ。

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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