アカデミアを揺るがすビットコイン旋風
テキサス州に新設されたオースティン大学(UATX)は、大学基金としてビットコインをポートフォリオに組み込む試みをスタートさせた。目標額は500万ドル、最低5年間の長期保有を掲げる。これは、暗号資産(仮想通貨)が大学の資産運用戦略に食い込み始めたことを象徴する動きだ。なお、このUATXは「テキサス大学オースティン校」とは別の独立した大学である。
運用を支えるのは、ビットコインカストディ企業「Unchained(アンチェーンド)」との提携による「共同カストディ」モデル。UATXは「ビットコインの長期的な価値と金融の分散化」に着目し、従来の債券・株式中心の大学基金の常識を覆す戦略を採用した。開発担当上級副学長のチャド・セヴェノット氏は、「ビットコインは株や不動産と並ぶ資産クラスの一つ」と断言する。
この流れはUATXだけではない。2018年にイェール大学が仮想通貨ベンチャーファンドへ投資し、ハーバードやミシガン大学の基金も仮想通貨関連の投資を行っていたと報じられている。そして2024年、エモリー大学がビットコインETFへの投資を公表。大学基金による仮想通貨投資は、確実に次のフェーズへ突入している。
しかし、懐疑的な声もある。コーネル大学のエスワール・プラサード教授は、「ビットコインは本質的に投機的資産であり、極めて価格変動が激しい」と指摘。ネブラスカ大学財団のCIOであるブライアン・ニール氏も、「規制の明確化と市場の成熟を待つべきだ」と慎重な姿勢を崩さない。
さらに、仮想通貨市場の規制環境は依然として流動的だ。米証券取引委員会(SEC)のビットコインETF承認から1年以上が経過し、市場の機関投資家参入が進んだが、新たな規制や政策の動向が引き続き市場に影響を与えている。しかし、そんな中でトランプ大統領が「アメリカをビットコインの超大国にする」と発言し、市場は再び活況を呈している。実際、仮想通貨は長期的に高いリターンを生んでおり、主要10銘柄の仮想通貨インデックスは過去5年間で年間平均64%のリターンを記録し、同期間の米国株式市場(14.5%)を大きく上回った。
この市場の急成長を背景に、ロックフェラー財団も仮想通貨への投資拡大を検討。また、仮想通貨投資専門のベンチャーファンド「Pantera Capital(パンテラ・キャピタル)」 は、機関投資家の関心が高まる中、大学基金や財団からの資金流入が増加していると報告している。
さらにUATXは、アンチェーンドと共同で 「ビットコイン・エデュケーション基金」を設立。研究や教育活動、ワークショップ、講演を通じて、アカデミアとビットコインの融合を促進する計画だ。
もはや「ビットコイン? そんなもんはあやしいギャンブルだ」と一蹴できるムードではない。「おいおい、アカデミアの世界についにビットコインが!」という驚きがジワジワと世界に広がっている。
関連:米名門エモリー大学、ビットコインETFに24億円投資|大学基金として初
関連:米MARA、テキサスの風力発電所を買収|再生可能エネルギーでビットコインマイニング