トランプ家が後押しするビットコイン関連企業「American Bitcoin(アメリカンビットコイン)」は3日、ナスダックに上場した。
マイニングとトレジャリーの二本柱で成長を狙う
初日は取引開始直後に一時倍近くまで急伸(高値約14.5ドル)したのち伸び悩み、終値は8.04ドル(前日比+約16.5%)で着地。時価総額は約72億ドル規模となった。
アメリカンビットコインは、ビットコインのマイニングとトレジャリーを両輪とするモデルを掲げる。共同創業者兼CSOのエリック・トランプ氏に加え、ドナルド・トランプ・ジュニア氏も広報・資金調達面で積極的に関与している。
同社の源流は、2020年設立の「Gryphon Digital Mining(グリフォンデジタルマイニング)」。2025年3月には「Hut 8(ハットエイト)」の資産拠出で「American Data Centers(ADC / アメリカンデータセンター)」を組成し、5月9日にグリフォンとアメリカンビットコインの合併契約を締結。上場直前には5対1の逆株式分割を実施し、社名をアメリカンビットコインへと改めてABTCで取引を開始した。
資本面でも攻勢が続く。6月には非公開株式発行で約2.2億ドルを調達。8月5日には「Bitmain(ビットメイン)」と約3.14億ドル相当の機器購入契約を結び、ハッシュレートの大幅増強に踏み切った。さらに上場と同時に最大21億ドルのATM(随時売出)計画を公表し、今後の調達余地を確保している。
その結果、ビットコイン保有は急増。6月時点の約215 BTCから、9月1日には2,443 BTCへと積み上げた。ナイアガラフォールズ(NY)、オーラ/ベガ(TX)、メディシンハット(AB)など北米の複数拠点でマイニング / ホスティングを展開し、「掘って貯める」のハイブリッド戦略で差別化を図る。
一方で、初日ボラティリティの高さや大型ATMによる潜在的な希薄化リスクは投資家が注視すべき点だ。第2四半期の業績は、Bloomberg(ブルームバーグ)報道によれば売上約3,030万ドル、純利益約340万ドルと黒字転換を示した。ただし機器増強と電力コスト、ビットコイン価格の変動が収益を大きく左右する。
アメリカンビットコインの上場は、政治と暗号資産(仮想通貨)が交差する象徴的イベントでもある。トランプ家の影響力と資本市場での機動力を背景に、同社がマイニング × トレジャリーのモデルをどこまで拡大できるか。保有2,443 BTCという「実弾」と72億ドル級の時価を手に、次の一手に注目が集まる。
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