4億ドルの資金調達を通じて戦略を強化
メッセージアプリ「Telegram(テレグラム)」のブロックチェーンプロジェクトを支援する「TON Foundation(TON財団)」と、英ロンドン拠点の投資会社「Kingsway Capital(キングスウェイキャピタル)」が、TONブロックチェーンのネイティブトークン「Toncoin(トンコイン)」を財務資産として長期保有するための公開会社を設立する計画だと、24日、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。報道によれば、調達額は最大で4億ドルにのぼるという。
なぜ彼らは財団で直接コインを保有せず、わざわざ「トンコイン保有を目的とする公開会社」を別途設立するのか? その意図は、いくつかの側面から読み解くことができる。
第一に、「信頼」と「透明性」の獲得だ。非営利財団というベールを脱ぎ、公開会社というガラス張りの器を用意することで、機関投資家が求める厳しい会計基準や情報開示の要求に応えることができる。これは、ウォール街のうるさ方を納得させるための、いわば「正装」だと見ることもできる。
第二に、リスクの分離だ。プロジェクトの開発・推進を担う財団本体の運営と、市況によって激しく価値が変動する暗号資産(仮想通貨)の資産運用を切り離す。この「ファイアウォール」的な戦略は、万が一の市場暴落が財団の活動そのものを揺るがす事態を防ぐための、賢明なリスク管理と考えられる。
第三に、最も重要なのが、機関投資家という巨大なマネーを呼び込むための「受け皿」としての役割だ。規制やコンプライアンスを重視する機関投資家にとって、非営利財団に直接コミットするよりも、金融市場のルールに則った「公開会社」の株式を取得する方が、はるかにハードルが低い。今回の計画の核心は、まさにこの一点に集約されるといってもよい。
このような動きは、決して突飛なものではない。Bitcoin(ビットコイン)を皮切りに、Ethereum(イーサリアム)やSolana(ソラナ)など、さまざまな仮想通貨を企業が財務資産として組み入れるトレンドは近年加速している。TON財団は、この大きな潮流に乗るだけでなく、より洗練された枠組みで制度対応を進めようとしているようだ。
2024年7月には、UAEのゴールデンビザ構想をめぐって混乱を招いた経緯もあるTON財団。しかし、そうした過去の経験を踏まえ、より現実的で持続可能な戦略へと進化したことを示している。この別会社戦略が、他の仮想通貨プロジェクトの新たな手本となるのか。TON財団の深謀遠慮が、仮想通貨市場の成熟を一段と推し進めることになるかもしれない。
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