ストラテジー、IPOで25億ドル調達&2万BTC購入──ビットコインを買い続ける理由は?

木本 隆義
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

総保有量は628,791 BTC(約10.9兆円)に

米ソフトウェア企業「Strategy(ストラテジー、旧マイクロストラテジー)」は29日、可変利回り型の永久優先株(STRC)の新規株式公開(IPO)が完了したと発表した。これにより総額約25億2,100万ドルを調達、これは2025年の米国IPO市場で現時点で最大規模となる。そして同社は、その純手取額にあたる約24億7,400万ドルを使い、同日付で21,021 BTCを追加購入した。この一見、大胆不敵に見える行動。しかしその本質は、株主の期待に徹底的に応えるという、きわめてシンプルな目的追求にある。

電光石火の早業により、同社のビットコイン総保有量は7月29日時点で約628,791 BTCにまで膨れ上がった。投資家はなぜ、暗号資産(仮想通貨)そのものではなく、ストラテジーという企業の株を買うのか? これは筆者の見解だが、かの有名なクレイトン・クリステンセン教授の「ジョブ理論」を当てはめてみると、すべての辻褄が合う。顧客は財貨・サービスを「雇用(ハイア)」して、自らの「ジョブ(片付けたい用事)」を解決する。ストラテジーの株主が「ハイア」したいジョブ、それは「自分で仮想通貨取引所の口座を開設したり、秘密鍵を管理したりする手間やリスクを負うことなく、安全かつ効率的にビットコインへのエクスポージャー(投資機会)を得たい」ということだと考えられる。

同社はこの投資家の「ジョブ」を解決するため、自らを「世界初かつ最大のビットコイン財務企業」へと変貌させた。本業で得たキャッシュフローや、今回のような市場からの調達資金を、ひたすらビットコインに換え続ける。それは、投資家からの「もっとビットコインを買ってくれ!」という声なき叫びに応える、忠実な仕事執行に過ぎない。

さらに言えば、30日頃からNASDAQ(ナスダック)で取引が始まるこのSTRC株は、米国市場で初めて月々の配当支払いを導入した点も示唆に富む。これは「ビットコインの価格上昇益だけでなく、安定したインカムゲインも欲しい」という、一部のよくばりな投資家の「ジョブ」を片付けるための施策とみることもできる。

ストラテジーの財務戦略は、狂気の沙汰でもなければ、錬金術でもない。それは、株主という顧客が本当に片付けたい「ジョブ」は何かを見極め、そのための最適なソリューションを提供することに徹した結果なのである。その挑戦が伝統的な金融界の目にどう映ろうとも、同社はビジネスの原点に、ただひたすらに忠実なだけなのだ。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.07円、1 BTC=118,068ドル)

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
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