同日発表で浮き彫りになったSBIのWeb3戦略
「SBIホールディングス株式会社(証券コード:8473)」傘下の「SBI VCトレード株式会社」と「Ripple Labs(リップル・ラボ)」は22日、米ドル建てステーブルコイン「Ripple USD(RLUSD)」を日本で発行・流通させるための基本合意書を締結したと発表した。2026年第1四半期の一般取扱い開始を目指す。
同日、SBIホールディングスは国内最大級の暗号資産(仮想通貨)メディア「CoinPost(コインポスト)」を運営する「株式会社CoinPost」の株式過半数取得も発表。10月1日の連結子会社化完了を予定しており、Web3分野での包括戦略が浮き彫りとなった。
数兆ドルのステーブルコイン市場と規制環境が後押し
両社の発表によると、世界のステーブルコイン市場は現在約3,000億ドル規模で、今後数兆ドル規模への拡大が見込まれている。グローバル金融インフラでのステーブルコインの重要性が高まる中、機関投資家の需要増大が成長を牽引すると予想される。
RLUSDは、コンプライアンスと透明性を重視した「信頼性の高いエンタープライズ向けステーブルコイン」として設計されている。米ドル預金、米国短期国債、その他現金同等物などの高品質な準備資産で100%裏付けられ、第三者会計事務所による月次検証を受けている。
SBI VCトレードの近藤智彦社長は「SBIグループはこれまでも、日本における暗号資産・ブロックチェーン分野の発展をリードしてきた。当社は2025年3月に国内で初めて電子決済手段等取引業者を取得、ステーブルコインの取り扱いを始めた。今回のRLUSD導入は、日本市場におけるステーブルコインの選択肢を広げるだけでなく、信頼性と利便性を大きく前進させる重要な一歩」とコメントした。
また、リップルのステーブルコイン部門シニア・バイスプレジデントであるジャック・マクドナルド氏は「SBIグループとのパートナーシップは、単なる技術連携にとどまらず、信頼性が高くコンプライアンスに準拠した金融の未来を共に築く取り組み。RLUSDは、伝統的な金融と分散型世界を結ぶ真の業界標準となるように設計されている」と述べた。
SBI VCトレードは暗号資産交換業者・第一種金融商品取引業者・電子決済手段等取引業者として高いセキュリティ体制を維持しており、すでにステーブルコインUSDCの国内初の取扱いを開始している。
CoinPost買収でWeb3の社会実装を加速へ
同日発表されたコインポスト買収は、RLUSD展開と並んでSBIの包括的なWeb3戦略を示す動きとなった。コインポストは、仮想通貨メディアの運営に加え、アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX」の企画・運営も手がけている。
SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は「コインポストが築き上げてきた暗号資産・Web3領域における信頼できる情報インフラを、より強固なものとしていく。メディアとしての公正性と中立性を担保しながら、グループ企業各社との連携によってWeb3の社会実装を加速する」と説明した。
グループ参画後は、以下の取り組みが予定されている。
- 「SBIグローバルアセットマネジメント」と連携した仮想通貨投資に関する情報提供
- 「SBI証券」のCFDサービス(8月25日開始予定)との連携
- WebXの継続開催やSBIとの共同イベント企画
一連の発表は、日本の仮想通貨市場における制度的インフラの発展と、機関投資家向けサービスの拡充を示すだけでなく、国内外の市場参加者にとっても新たな成長局面の到来を印象づける象徴的な発表となった。