暗号資産(仮想通貨)「Mantle(マントル、MNT)」は11日に10.2%超上昇し、従来の史上最高値である1.51ドル(2024年4月8日記録)を突破した。本記事執筆時点で1.62ドル付近を推移している。今回の急伸は、仮想通貨取引所「Bybit(バイビット)」との提携強化や米国政府による経済データ配信への参加といった直近の動きが大きく影響していると伺える。

投資家に実需を意識させる仕組み拡充が価格上昇を牽引
第一の要因はバイビットとの統合だ。MNTは単なるガバナンストークンから発展し、同取引所内で幅広い用途を持つ資産へと変化している。取引手数料の割引やVIPランクの向上、担保資産としての利用が可能となり、さらにローンチパッドやローンチプールでの特典、決済手段としての活用も進む。9月には取引ペアも大幅拡充され、MNT基軸ペア5つと見積ペア13つの計18ペアが新規上場した。この取引ペア拡充により、投資家は従来以上に柔軟なMNT取引が可能となり、特にMNT基軸ペアの導入は同トークンの基軸通貨としての地位向上を示している。日次で現物30〜50億ドル、デリバティブ市場で2,500億ドルを超えるバイビットの取引規模と直結する点は、MNTの基盤価値を支える重要な要素である。
もう一つの要因は米国政府の動きだ。政府はブロックチェーン・オラクル「Chainlink(チェーンリンク)」を通じてGDPデータをオンチェーン化し、10のブロックチェーンに配信を開始。その配信先の一つにマントルが選ばれた。公共データを直接活用できる体制が整ったことで、規制対応型の金融商品やRWA(現実世界資産)の展開において相乗効果が期待される。
これらの事例は、マントルがイーサリアムのレイヤー2として、投機を超えて実社会に一歩ずつ浸透していることを示している。取引所サービスに直結するユーティリティを獲得し、さらに政府統計データの配信先に選ばれたことは、同ネットワークが実用段階へ移行しつつある証左といえる。
こうした直近の動きの背景には、旧ブランド「BitDAO(ビットダオ)」からマントルへのリブランディングだ。2023年には約3億ドルのステーブルコインと27万ETHを戦略資産として統合し、RWA分野に注力する方針を打ち出した。さらにバイビット幹部がアドバイザーとして加わり、運営や商品開発の知見を取り込むことで戦略を強化している。
現在、大手取引所による独自チェーンの展開は進んでいる。「Binance(バイナンス)」は「BNBチェーン」を、「Coinbase(コインベース)」は「Base(ベース)」を推進しており、バイビットはマントルを中核に据えている。伝統的金融と分散型金融の融合が進む新たな競争環境の中で、マントルの存在感は着実に高まっている。
マントルのATH更新は、バイビットでの実需獲得と米政府データ配信への採用という二つの事例が重なった結果だ。これは、マントルが単なるトークン投機を超え、制度対応や公共データ活用を視野に入れた実用段階へと進みつつあることを示す。ただし短期的な価格上昇には調整局面も予想されるため、投資家はネットワークの中長期的な実装と成長戦略を注視する姿勢が求められる。
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