マルチアセット戦略を強化する狙い
暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken(クラーケン)」は20日、米国のリテール向け先物取引プラットフォーム「NinjaTrader(ニンジャトレーダー)」を15億ドル(約2,235億円)で買収する契約を締結したと公式ブログで発表した。
クラーケンは今回の買収について、「プロフェッショナルトレーダーのための24時間365日稼働するテクノロジープラットフォーム」としての地位をさらに強化するとともに、米国市場における仮想通貨および伝統金融の先物取引でリーダーとなることを目指す方針を明らかにしている。また、株式取引や決済分野への進出といった、マルチアセット展開に向けた戦略の加速も視野に入れているという。
ニンジャトレーダーは2003年に設立され、現在では約200万人のトレーダーが利用する先物取引プラットフォームとして成長を遂げている。米商品先物取引委員会(CFTC)に登録された先物取引業者(FCM)でもあり、規制対応の信頼性も高い。クラーケンによれば、ニンジャトレーダーの取得によって、仮想通貨関連のデリバティブ取引を米国内でも合法的に提供できるようになるという。
この取引による主な戦略的利点として、クラーケンは以下の4点を挙げている。
- 米国市場での仮想通貨先物の提供
ニンジャトレーダーが保有するCFTC登録のFCMライセンスにより、クラーケンは米国でも仮想通貨の先物およびデリバティブ商品を提供できるようになる。 - グローバルな規制ライセンスを活用した成長促進
クラーケンはすでに英国(MiFID)、EU(MiFID)、オーストラリアにおける証券ライセンスを保持しており、これを活用してニンジャトレーダーの事業をこれらの地域に拡大できる。 - シームレスなマルチアセット取引の実現
両社の顧客は、仮想通貨、先物、そして伝統的な金融商品を一元的に取引できる環境を享受できるようになる。 - 高度な取引ツールへのアクセス
ニンジャトレーダーのプロ向け分析機能、取引エンジン、先物流動性と、クラーケンの仮想通貨取引環境が統合されることで、取引効率と利便性が大きく向上する。
クラーケンの共同CEOであるアルジュン・セティ氏は、「伝統的な市場は第二次世界大戦後の1950年代に構築された古いシステムに依存しており、午後4時に閉場し、決済にも数日を要する」と指摘した上で、「一方で仮想通貨は、リアルタイムで効率的に動作するインフラを提供しており、今回の買収は、すべての資産をいつでも取引可能にする機関グレードのプラットフォーム実現に向けた第一歩だ」と語っている。
仮想通貨と伝統金融の融合は長年の課題とされてきたが、クラーケンによるニンジャトレーダーの買収は、そのギャップを埋める具体的な一手となる。規制の壁を乗り越え、プロトレーダー向けの環境をマルチアセットで提供する試みは、今後の金融業界のトレンドを形作る重要な布石になるだろう。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.03円)