香港政府の財経事務・庫務局(FSTB)の許正宇(クリストファー・ホイ)局長は5日、立法会の財経事務委員会で、暗号資産(仮想通貨)の取引、カストディ(保管)、助言、運用の各サービスに免許制度を設ける条例改正案を年内に提出すると表明した。法案は2025年から続けてきた協議の結果を反映するもので、既存の業者を免許取得済みとみなす措置は設けない方針だ。
香港の暗号資産免許、取引所から4業務へ拡大
香港では2023年6月、暗号資産取引所(VATP)の免許制度が始まった。今回の法案は、取引所以外の業者にも免許を求めるものだ。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年6月27日 | FSTBと証券先物委員会(SFC)が取引とカストディの制度案で協議を開始 |
| 2025年8月29日 | 協議終了。意見は取引101件、カストディ93件 |
| 2025年12月24日 | 協議結果を公表。助言と運用を別の免許に分け、追加の協議を開始 |
| 2026年1月23日 | 追加の協議が終了。意見は51件 |
| 2026年5月26日 | 追加の協議結果を公表。4制度の法案を年内に提出する目標を明示 |
| 2026年10月5日 | 許局長が立法会で年内提出を表明 |
4つの制度は、いずれも既存の証券規制に合わせる。取引は証券先物条例の第1種(証券取引)、助言は第4種(証券の助言)、運用は第9種(資産運用)がモデルだ。カストディは、香港で顧客の暗号資産の秘密鍵を保管する業務に焦点を当てる。
法案は、マネーロンダリング・テロ資金対策条例(AMLO)の改正として提出する。
香港、既存業者にも猶予なし──海外からの勧誘も禁止
協議結果によると、既存の業者を免許取得済みとみなす措置は設けず、条文の施行日から制度を全面的に適用する方針だ。SFCや香港金融管理局(HKMA)に事前相談をしていない業者は、施行日に業務を止めなければならず、事業に支障が出るおそれがあるとした。
施行日は、業者が事業モデルを見直すのに必要な時間を考慮して決める。
海外の業者も無関係ではない。免許を持たない者が、香港の内外を問わず、香港の一般向けに取引、助言、運用のサービスを積極的に勧誘することを禁じる。
業務の線引きも具体的に示した。他人の売買をまねるコピートレードは助言に当たり、売買の執行まで担えば取引、裁量で売買すれば運用にも当たる。AIやアルゴリズムで推奨を出すツールの提供も、助言とみなす。
運用には、暗号資産の比率による適用除外を設けない。これまで比率10%未満のポートフォリオを運用する第9種の業者は暗号資産向けの条件の対象外だったが、新制度では免許が必要になる。
2025年12月の原案から変わった点もある。原案では助言業者と運用業者に払込資本500万香港ドル(約1億円)を求めていたが、5月の協議結果では、顧客資産を預からない業者の最低資本を流動資本10万香港ドル(約201万円)のみとした。
私募ファンドの暗号資産の保管先についても、原案ではSFC規制下の業者に限るかを検討していたが、海外を含む適格なカストディアンを選べるようにした。
日本も改正金商法で暗号資産の助言・運用を規制
日本では7月15日、暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法に移す改正法が成立し、23日に公布された。金融庁の法律案要綱によると、暗号資産を投資対象とする投資運用と投資助言を、それぞれ投資運用業と投資助言・代理業の規制対象にする。
| 項目 | 香港 | 日本 |
|---|---|---|
| 根拠法 | AMLOを改正 | 金融商品取引法を改正 |
| 助言・運用 | 新たに免許制度を設ける | 投資助言・代理業、投資運用業の対象にする |
| 段階 | 年内に法案提出予定 | 7月15日成立、7月23日公布 |
| 施行 | 未定 | 原則、公布から1年以内に政令で定める日 |
| 既存業者 | みなし措置なし | 経過措置は附則で規定 |
日本の改正法には、暗号資産の発行者や金融商品取引業者などから対価を受けて取引判断に関する意見を一般に示す場合に、対価を受けている旨の表示を義務付ける規定も入った。香港も金融インフルエンサーについて、既存の証券規制とあわせて別途全体の見直しを行うとしている。
2026年の施政報告によると、香港のSFCは今年後半にデジタル資産のカストディを監視するシステムの運用を始め、2027年には市場監視とマネーロンダリング対策の監視機能を稼働させる予定だ。
関連:金融庁、無登録の海外暗号資産業者に対応強化──課徴金も視野に
※価格は執筆時点でのレート換算(1香港ドル=20.14円)



