仮想通貨の運用枠を2.5億ドルに拡大
北米最大級のゲーミングメディアネットワークを運営する次世代メディア・エンターテインメント企業の「GameSquare(ゲームスクエア / NASDAQ:GAME)」は21日、約3,000万ドル(約44億円)を投じて、新たに8,351 ETHを追加取得したことを明らかにした。これにより、同社の暗号資産(仮想通貨)保有高は合計で10,170 ETH(約3,781万ドル相当)に達した。
今回の購入は、単なる資産ポートフォリオの多様化にはとどまらない。同社取締役会は、仮想通貨を用いた財務管理プログラムの承認額を、これまでの1億ドルから2億5,000万ドルへと一気に引き上げた。まさに、アクセル全開である。
同社の計画はイーサリアムの単純保有に留まらない。今回の発表の核心は、新たに立ち上げた「NFT利回り戦略」にある。まず1,000万ドルが割り当てられたこの戦略は、同社が保有するイーサリアム資産を積極的に活用するものだ。具体的には、分散型金融(DeFi)プロトコルを利用して、年率6%から10%の安定した利回り(イールド)を生み出すことを目標に掲げている。
CEOのジャスティン・ケンナ氏は「これは単なるヘッジではない。株主価値の創造に焦点を当てた、複数年にわたる成長戦略だ」と断言する。彼の言葉を借りれば、同社はイーサリアムを「ただ保有するのではなく、独自の方法で働かせる」ことを目指している。つまり、仮想通貨を会社の成長を加速させるための「ダイナミックなエンジン」と位置づける。
この野心的な計画を支えるため、ゲームスクエアは仮想通貨投資の専門家たちと戦略的パートナーシップを締結した。「Dialectic(ダイアレクティック)」のライアン・ズーラー氏らは、プログラムの管理と最適化を担う。とくにダイアレクティック社が開発した専有プラットフォーム「Medici(メディシ)」は、機械学習や自動最適化を駆使し、現在のイーサリアム・ステーキングの利回りを大幅に上回る、年率8%から14%という驚異的なオンチェーン利回りを目標とするという。
NFT戦略では、同社の創造的なDNAと親和性の高い、文化的かつ象徴的なデジタルアートや収集品に焦点を当てる。これは、同社がゲームやクリエイティブ環境の構築で培ってきた経験を、デジタル資産の価値評価に活かせるという自信のあらわれだろう。
リスク管理も怠らない。専門のデジタル資産投資委員会を設置し、取締役会に直接報告する体制を構築。コンプライアンスやセキュリティ、資産評価の完全性を常にレビューするという。
ゲームスクエアの今回の動きは、伝統的な企業の財務戦略の枠を超えている。仮想通貨という変動のはげしい資産を、企業のバランスシート強化と経常的なキャッシュフローの源泉に変える試みでもある。この挑戦が、次世代メディア企業の新たなスタンダードとなるのか、あるいは壮大な博打で終わるのか。行く末を見届けたい。
※金額は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.5円、1 ETH=3,717.9ドル)