デジタル資産運用会社「CoinShares(コインシェアーズ)」のリサーチ責任者であるジェームズ・バターフィル氏は1日、最新の週次レポートを発表した。
PCE発表でFRB利下げ期待後退、一時流出
同氏によると、先週の暗号資産(仮想通貨)関連の金融商品には、全体で24.8億ドルもの資金が流入したという。この結果、8月単月の流入額は43.7億ドルに達し、年初からの累計では355億ドルという大きな数字を記録した。しかし、市場は順風満帆というわけではない。価格の下落基調が影響し、全体の運用資産総額(AUM)は直近のピークから10%減少し、2,190億ドルまで後退している。
レポートが特に指摘するのは、先週金曜日に市場の空気が一変した点である。週を通して堅調に推移していた資金の流れは、米国のコア個人消費支出(PCE)価格指数の発表を受けて暗転した、とコインシェアーズは分析する。PCEの数値が、市場が期待していた米連邦準備制度理事会(FRB)による9月の利下げ観測を後押しするには至らなかったためだ。失望した投資家たちによる利益確定売りが広がり、資金は流出へと転じた。
もっとも、悲観論が市場を支配しているわけではない。地域別に見ると、米国が22.9億ドルという圧倒的な流入額で市場を牽引している。それに加え、スイス(1億940万ドル)、ドイツ(6,990万ドル)、カナダ(4,110万ドル)といった他の主要地域でも軒並み資金流入が確認された。この広範な投資意欲を見る限り、金曜日の流出は資産クラス全体への懸念を示すものではなく、短期的な利益確定の動きであった可能性が高い、とバターフィル氏は分析する。
通貨別の動向では、イーサリアムとビットコインの間で対照的な結果が浮き彫りとなった。先週、イーサリアムには14億ドルという巨額の資金が流入したのに対し、ビットコインは7.48億ドルにとどまった。この傾向は8月全体で見るとさらに顕著になる。イーサリアムが月間で39.5億ドルの流入を記録した一方で、ビットコインは逆に3.01億ドルの流出を喫した。この「逆転現象」は、市場の関心がどこに向かっているかを雄弁に物語っているのかもしれない。
その他の通貨では、ソラナとXRPが引き続き投資家の関心を集めている。米国でこれらの仮想通貨を対象とした上場投資信託(ETF)が承認されるのではないか、という希望的な見方が背景にある。その期待を反映し、先週はそれぞれ1.77億ドルと1.34億ドルの資金が流入した。
仮想通貨市場は依然として力強い資金流入を維持しているものの、その足元は決して盤石ではない。FRBの金融政策を巡る些細なニュースが、投資家心理を大きく揺さぶる状況は今後も続くだろう。市場参加者は、マクロ経済の動向に一層の注意を払う必要がありそうだ。
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