エルサルバドル立法議会は8日、第68回本会議で投資銀行法(Ley de Bancos de Inversión)を55票で可決したと発表した。同法により、最低25万ドルの投資能力を持つ「洗練された投資家」を対象とした投資銀行の設立が可能となり、ビットコインを含むデジタル資産サービス提供の法的基盤が整備された。
25万ドル以上の『洗練投資家』限定でデジタル資産サービス解禁
今回の法案可決は、同日エルサルバドルのビットコインオフィスが発表した「ビットコイン銀行」設立計画の具体的な法的基盤となるものだ。当初は詳細が明らかにされていなかったが、投資銀行法の成立により、ビットコインサービス提供銀行の設立要件と運営枠組みが明確化された。
高度金融サービス専門機関として位置付け
新法では、投資銀行を資産管理、財務アドバイザリー、企業再編(M&A)、構造化金融、市場分析などの高度金融サービスを提供する専門機関として位置付けている。これらの銀行は従来の商業銀行とは区別され、中央準備銀行(BCR)が規制し、金融システム監督庁(SSF)が監督する。
投資銀行設立には最低資本金5,000万ドルが必要で、「洗練された投資家」のみにサービスを提供する。この投資家要件として、高度な金融知識・経験、複雑な投資リスクを負担する財政能力に加え、現金や流動性資産で25万ドル以上の自由投資可能資金の保有が条件となる。
ビットコイン・デジタル資産業務を法的に承認
法案で特に注目されるのは、投資銀行が適切な承認を得て以下のデジタル資産関連サービスを提供できることが明文化された点だ:
- デジタル資産サービスプロバイダー
- デジタル資産発行者
- ビットコインサービスプロバイダー
対象となるデジタル資産には、ビットコイン、ステーブルコイン、トークン化金庫証券、トークン化金などが含まれる。これらのサービスも「洗練された投資家」限定で提供される。
戦略的プロジェクト資金調達の促進狙い
推進者のダニア・ゴンサレス議員は「投資銀行は政府、機関、企業が大規模プロジェクトの資金調達を支援し、株式や債券の市場販売を通じて資金を獲得できる」と説明している。
同議員は法案の5つの戦略的効果として、国際民間資本の誘致、インフラ・エネルギー・技術・革新分野への資源配分、金融システムの制度拡張、資本市場とデジタル資産市場の深化、国際的地位向上を挙げた。
中米金融ハブ構想の具現化
ゴンサレス議員は「エルサルバドルを専門的金融ハブに転換し、国際的評判と制度的信頼、競争力を生み出している」と強調した。商業・産業・技術の活性化を加速し、従来の銀行では困難な複雑な資金調達スキーム設計を可能にするとしている。
BCRとSSFは2年ごとに「洗練された投資家」と投資銀行自体の最低財務要件を見直し、市場環境の変化に対応する仕組みも導入された。
ナジブ・ブケレ政権が推進するビットコイン政策の一環として、今回の法制化により民間部門でのデジタル資産サービスが本格的に解禁される見通しだ。
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