XユーザーSchlag氏は29日、利回り型ステーブルコインを発行するプロトコルであるStream(ストリーム)とElixir(エリクサー)が、互いのトークンを再帰的に発行・担保化することでTVL(総ロック資産)を不正に水増ししている可能性があると告発した。
TVLを偽装する「ポンジ」的スキームの手口
Schlag氏は、両プロトコルが「我々が暗号資産(仮想通貨)でしばらく見ていなかったようなポンジスキーム」を構築していると強く非難した。
告発されたスキームは、「ストリーム(ステーブルコインxUSDを発行)とエリクサー(ステーブルコインdeUSDを発行)が共謀し、互いのトークンをミント(発行)し、それを担保に互いから資金を借りるという循環的なループを形成している」というものだ。
Schlag氏は、オンチェーンのトランザクション分析に基づき、この循環スキームがどのように機能しているかを4つのステップで詳細に解説している。
ステップ1:ストリームによるエリクサーのトークン(deUSD)のミント
まず、ストリームは受け取ったUSDCをUSDTにスワップし、そのUSDTを使ってdeUSDをミントする(原資であるUSDCは、これ以降のステップにより循環的に生み出される)。
次に、ミントしたdeUSDをWorld ChainなどのL2(レイヤー2)ネットワークにブリッジし、それを担保として他のステーブルコイン(USDTなど)を借り入れる。
Schlag氏によると、ストリームはこのプロセスを複数回繰り返し、借り入れた資金でさらにdeUSDをミントするというレバレッジループを行っている。ただし、この時点では「高リスクではあるものの詐欺的ではない」という。
ステップ2:ストリームによる自己トークン(xUSD)の「再帰的ミント」
Schlag氏が「ストリームの特別な力」と呼ぶ手口は、ステップ1で借り入れたステーブルコインを使い、今度はストリーム自身が発行するステーブルコインxUSDをミントするというものだ。
同氏は、現地時間27日の事例として、わずか190万ドルのUSDCを元手に約1,450万ドル相当のxUSDがミントされたと指摘。
これにより、xUSDは1:1で裏付けられておらず、プロトコル自身がxUSDの流通量の60%以上を管理している状態にあると分析。Schlag氏の試算では、本来1ドル相当の裏付け資産を持つべきxUSDの実際の裏付け資産は「最大でも0.40ドル」に過ぎないという。
ステップ3:エリクサーによるxUSD担保市場への資金供給
ではストリームは、ミントした担保価値の疑わしいxUSDを使い、どこから資金を借りるのか。Schlag氏は、その貸し手こそがエリクサーであると指摘する。
エリクサーは、新たに調達したUSDTをUSDCにスワップし、レンディングプロトコルMorpho(モルフォ)上の特定の市場にそのUSDCを供給する。
この市場は、ストリームのxUSDを担保としてUSDCを貸し出すために設定されたものであり、通常のUI(ユーザーインターフェース)からは隠されているという。さらに、この市場への唯一のUSDC供給者(貸し手)はエリクサーであると指摘。つまり、レンディングプロトコルを介して、エリクサーがストリームに資金を提供しているということだ。
ステップ4:循環ループの完成
この隠された市場において、エリクサーがUSDCを供給し(ステップ3)、ストリームがミントしたてのxUSD(ステップ2)を担保にそのUSDCを借りる。
そして、ストリームが借りたUSDCは、再びステップ1に戻り、エリクサーのdeUSDをミントするための原資となる。
DeFiシステム全体へのリスクを警告
Schlag氏は、この循環的な仕組みにより、システム全体を裏付ける実際の担保が「(1ドルあたり)0.10ドル未満である可能性が高い」と結論付けた。
同氏は、xUSDやdeUSDを直接保有していなくても、これらのトークンを担保として受け入れている他の市場に資産を預けていればユーザーはリスクに晒されることを指摘。そして、これがDeFiエコシステム全体のリスクでもあると警告する。投稿の最後には、「自分の利回りがどこから来ているのか確認すべきだ」と呼びかけた。
Schlag氏の告発内容については、執筆時点では事実であると裏付けられているわけではないが、事実であれば多くのDeFiプロトコルに影響を及ぼしかねないものと言えるだろう。同氏は、他のプロトコルも同様の手口を用いている可能性があると指摘しており、十分に警戒する必要がありそうだ。
関連:パクソス、技術的エラーでステーブルコインPYUSDを約300兆枚誤発行──全量を即時バーン
関連:ステーブルコインUSDH、ハイパーリキッドで稼働開始──すでに1,500万ドル超がミント




