ウォレットは「保管庫」から「プラットフォーム」へ
米国に本拠地を置く世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所「Coinbase(コインベース)」は17日、同社が長年提供してきた自己管理型ウォレット「Coinbase Wallet(コインベースウォレット)」を、新たに「Base App(ベースアップ)」としてリブランドしたと発表した。
この発表は、突如として同社の公式Xアカウントに投下された。
「ベイビー、目を覚まして。新しい @baseapp がリリースされたよ(Babe wake up, the new @baseapp just dropped.)」という、何とも人を食ったようなメッセージだ。言うまでもなく、これは単なる名称の変更に留まるものではない。むしろ、同社にとって大きな転換点ともとれるリブランドである。新しいベースアップの公式アカウントは、「コインベースウォレットは、もはや単なるウォレットではない」と投稿し、新アプリの多機能化をアピールした。
具体的に何が変わるというのか? 新アプリは「創造性が報われるアプリ」と銘打たれている。そこでは、資産の取引や管理はもちろんのこと、コンテンツの投稿、報酬の獲得、ゲームのプレイ、そして友人とのチャットといった多様な機能が一つに統合される。もはや金融アプリというより、ソーシャル機能まで内包した一種の統合型プラットフォームと呼ぶべき代物だ。
ビットコインやイーサリアムはいうに及ばず、ソラナやドージコインなど、多数の仮想通貨に対応。ユーザーは資産を安全に保管しつつ、DeFi(分散型金融)で収益を得たり、収集品、すなわちNFT(非代替性トークン)を売買したりすることが可能になる。まさに「オンチェーンのあらゆるものへのホーム」だ。
なぜ今、このような大規模なリブランドに踏み切ったのか? その背景には、コインベースが開発を主導するブロックチェーン「Base(ベース)」の存在があると考えられる。ベースネットワークの利用を促進し、その経済圏を拡大させるためには、ユーザーがストレスなくアクセスできる強力な入り口が不可欠だ。したがって、最も多くのユーザー接点を持つウォレットアプリに「Base」の名を冠し、そのハブとして再定義することは、きわめて理にかなった戦略といえるだろう。銀行口座やカード決済など、120カ国以上で法定通貨から仮想通貨へ簡単にアクセスできる機能も、新規ユーザーを自社の経済圏に呼び込むための重要な布石に他ならない。
今回のリブランドは、コインベースが単なる取引所から、Web3世界の総合的なプラットフォームへと脱皮しようとする野心的な一手である。強豪ひしめくウォレットアプリ市場において、この大胆な刷新がユーザーに受け入れられるのか。仮想通貨がより大衆化するための一里塚となるか、それとも壮大な実験に終わるのか。それを見届けたい。
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